同期からの誘い6
1時間半後、警察から連絡が入った。
同期は無事保護された。
そう聞いた瞬間、事務所の空気が一気に緩んだ。
上司も班長も、そして俺も、胸を撫で下ろした。
だが、次の言葉で全員の表情が固まった。
「……髪が真っ白になっていまして、
その…顔も……皺が深く刻まれてる状態でして、
とにかく、すぐ病院に搬送しました。」
年齢に似つかわしくない“老い”が、
一晩で同期の身に起きていた。
数日後、他の同期と一緒に見舞いに行くことになった。
病室に入ると、ベッドの上の男は、
俺たちが知っている同期とはまるで別人だった。
白髪は乾いた藁のように乱れ、
肌は土気色で、目の焦点がどこにも合っていない。
「……おい、わかるか?」
声をかけても、反応はなかった。
ただ、唇がかすかに震え、
小さく、途切れ途切れに言葉が漏れた。
「……やつが……来る……
こわい……
しにたくない……」
その声は、まるで別人のように弱々しく、
聞いているだけで背筋が冷えた。
ご両親は何度も頭を下げてきた。
「本当に……申し訳ありません……
息子が……ご迷惑を……」
俺たちは「そんなことないです」と返すしかなかった。
病室を出る時、
胸の奥に、どうしようもないやるせなさが残った。
あいつは、あの夜、何を見たんだろう。
それから数日後、
同期は息を引き取った。
あまりにも早すぎる死だった。
葬儀の帰り道、
俺の胸にはずっと同じ問いが渦巻いていた。
俺が止めていれば、生きていたのだろうか。
答えの出ない後悔だけが、
じわじわと胸の内側を染めていった。
あれから数年が経った。
●▲■ホテルは解体され、
今はただの更地になっている。
けれど、あの場所の前を通るたびに、
俺はどうしても思い出してしまう。
あの夜、同期が送ってきた
『●▲■ホテル ○○号室』
という、あの一行を。
そして…
あの時、既読をつけた“誰か”のことを。




