同期からの誘い2
金曜日の夜、俺は彼女といつもの定食屋で晩ご飯を食べていた。
社会人になって数ヶ月、ようやく仕事にも慣れてきた、金曜の夜だけは少し肩の力が抜けるようになっていた。
「明日どこ行く?」
「水族館行きたいって言ってたやん」
「じゃあ朝イチで行こっか」
そんな他愛もないデートの話をしていた時だった。
テーブルの上のスマホが、ぶるっと震えた。
画面を見ると、会社の同期からだった
(なんだよ、またかよ。しつけぇなぁ…)
そう思いながらスマホを開くと、短いメッセージが並んでいた。
『今着いたぜ』
『来ねぇのかよ?』
『なんなら彼女と来てもいいんだぜ』
どうやら本当に●▲■ホテルに行ったらしい。
●▲■ホテル
地元では昔から“出る”と噂されていた廃ラブホだ。
高校の頃、肝試しに行ったやつが「絶対に行くな」と青ざめて帰ってきた、
そんな話を聞いたことがある。
俺はそういう場所が本当に苦手だった。
「いやいや、行かねぇよ」
「明日水族館行くしよ」
「朝早いから寝るわ」
そう返して、スマホを伏せた。
彼女が「またあの同期?」と笑ったので、
「そうそう。あいつ、ああいうの好きなんだよ」とだけ答えた。
その日はそれっきり、同期からの連絡は来なかった。
土日は予定通りデートして、
水族館に行って、映画を観て、
夜は家でゆっくりして、
本当に、なんでもない普通の休日だった。
そして月曜日。
会社に行くと、指導員の先輩が眉をひそめて俺に声をかけてきた。
「おい、お前さ……同期と連絡つかねぇか?」
「え?」
「別の職場のやつから連絡あってよ。あいつ、無断欠勤してるらしいんだわ。
電話も出ねぇし、家にもいねぇらしい。
なんか知らねぇか?」
突然の言葉に、胸の奥がざわついた。
「いや……金曜日に、●▲■ホテルに肝試し行くって連絡来ただけで……
それ以降、何もないっスよ?」
自分で言いながら、
金曜の夜に来たあのメッセージが頭の中で蘇った。
『今着いたぜ』
『来ねぇのかよ?』
『なんなら彼女と来てもいいんだぜ』
あれが、同期からの最後の連絡だった。




