陽の光と共に 5
「腹減ったな」
誰かがぽつりと言った。
「ラーメン食って帰ろうぜ」
「賛成。冷えたしよ」
「いや、こんな時間に開いてねぇだろ?」
「いやいや、24時間やってる店あるんだって。ほら、あの国道沿いのとこ」
「あー、あそこか。確かに開いてそうやな」
そんな会話をしながら、
俺たちは駐車場へ向かって歩き出した。
砂浜を離れると、
急に周囲が静かになった。
さっきまであれだけ人がいたのに、
今は俺たちの足音だけが、
コツ、コツ、と冷えた空気に響いていた。
(……さっきの声のこと、ラーメン屋で話すか)
そう思いながらも、
なんとなく言い出すタイミングが掴めなかった。
駐車場に着くと、
車の窓に薄く霜がついていて、
それを手で払う友達の姿が妙におかしくて、
つい笑ってしまった。
「今年も面白い年になりそうやな」
自分でも驚くくらい自然に、
そんな言葉が胸の中に浮かんだ。
エンジンをかける前に、
ふと海の方を振り向いた。
さっきまで俺たちが座っていた場所に、
朝日がまっすぐ差し込んでいる。
そこにはもう、
“誰かが座っていた跡”すら残っていなかった。
ただ、波の音だけが静かに寄せては返し、
まるで何事もなかったかのように
新しい年の朝が広がっていた。
あの声は、初日の出に照らされて、ようやく帰る場所へ辿り着けたのかもしれない。




