陽の光と共に 4
海の向こうが、少しずつ明るくなってきた。
「お、なんか空の色変わってきたぞ」
「ほんまや。夜と朝の間って感じやな」
「こういう時間、なんか好きやわ。静かで」
全員、砂浜にドカッと腰を下ろした。
冷たい砂がじんわりと体温を奪うけど、
それすらも妙に心地よかった。
「そういやさ、今年こそキャンプ行こうや」
「お前、去年も言ってたやん。結局行ってへんし」
「いや、今年はほんまに行くって。テント買ったし」
「買っただけで満足してるやつの言い方やな」
「うるさいわ。焚き火したいねん」
笑い声が波に混ざって消えていく。
「俺は釣り始めたいなー」
「絶対三日で飽きるやろ」
「いや、今年の俺は違うって」
「毎年言ってるぞ、それ」
そんな他愛ない話をしていると、
その会話の中に、
聞き覚えのない声が混ざっている気がした。
(……またや。
やっぱり、一人多い?)
胸の奥がざわつく。
でも、みんなは普通に笑っている。
誰も気づいていないように見える。
「そういやさ、あの店まだ行ってへんよな」
「どこ?」
「ほら、駅前のラーメン屋。深夜だけ開いてるとこ」
「あー、あそこ気になってたわ」
「初日の出見た帰りに行く?」
「いや、絶対混んでるって」
「でも腹減ったなー」
「お前さっきコンビニで肉まん食ってたやろ」
「それはそれ、これはこれや」
笑いながら話しているのに、
その輪の中に“知らない声”がひとつ混ざっている。
若いような、年寄りのような、
男か女かも分からない声。
(言うべきか……
いや、やめとこ。
こんな時間に変なこと言って空気壊すのもな)
葛藤が胸の奥でじわじわ広がる。
空はさらに明るくなり、
海面が薄い金色を帯び始めた。
「うわ、めっちゃ綺麗やん」
「写真撮っとこ」
「いや、これは肉眼で見た方がええやつやろ」
「寒いけど、来てよかったな」
一時間ほど、
ゆっくりと変わっていく空を眺めていた。
そして、
太陽がゆっくりと海から顔を出した瞬間だった。
右側から、小さな声が聞こえた。
…最後まで話を聞いてくれて、ありがとう……
「えっ?」
思わず右を見る。
けれど、誰もいない。
ただ、砂浜には
“誰かが座っていた跡”だけが、
ぽつんと残っていた。
陽の光が当たった瞬間、
胸の奥にあった違和感が、
すっと溶けるように消えていった。
まるで、
光と一緒に帰っていったみたいに。




