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蔵に眠るひと 後日譚

全てが終わり、

本堂の静けさを背にお寺を出ると、

冬の空気がやけに澄んで感じた。

胸のざわめきはもうなく、

代わりに、深い呼吸が自然とできるような軽さがあった。

そのまま車に乗り込み、

ゆっくりと帰路についた。


そして翌日。

友人から連絡が入った。

「親父がな……お詫びしたいって。

 飯でもどうや?」

その声がどこか気まずそうで、

逆に笑ってしまった。

「ええよ。行くわ」

向かった先は焼肉屋だった。

席に着くと、

親父さんが深々と頭を下げてきた。


「昨日は……ほんまにすまんかったな」

「気にしないでください。

 むしろ、ご馳走になる方が気が引けますよ」


そう言うと、

親父さんは苦笑しながら肉を焼き始めた。

そこからは、

昨日の緊張が嘘みたいに、

温かい会話が続いた。

友人の仕事の話、

親父さんの昔話、

年末の買い物が面倒くさいだの、

どうでもいいような話が妙に心地よかった。

焼肉の煙が上がるたび、

昨日の蔵の冷気が遠いものになっていく。

食事を終えて店を出ると、

冬の空は澄んでいて、

星がいくつか瞬いていた。

ふと、思った。


やっぱり、代々続く家にはそれなりに“色々”あるんやな。


でも、

それを抱えて生きてきた人たちの強さも、

昨日と今日で少しだけ分かった気がした。

冷たい空気を吸い込みながら、

微かに笑って帰路についた。

その笑みは、怪異が去った安堵と、

人の温かさに触れた後の静かな余韻が混ざったものだった。

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