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雪山での恐怖体験 4

友人はグラスを置き、少し間を置いてから続けた。

「……道の駅に着いた時、少しでも恐怖心を払拭しようと思って、お土産物屋に入ったんだ。職場に無理を言って休みを取ったのもあって、せめて何か買って帰ろうと思ってさ。」

俺は頷いた。

「なるほどな。気分を変えようとしたんだな。」

友人は苦笑し、すぐに真顔に戻った。

「入った瞬間、レジにいた感じのいい女性が声をかけてきたんだ。『ご夫婦でボード帰りですか?いいですねー、平日おやすみのお仕事なんですか?』って。俺は混乱したよ。ひとりで来てるのに、どういうことだって。」

俺:「……それ、どう答えたんだ?」

友人:「言葉に詰まってたら、その女性が『少しお話されませんか?』って言ってきたんだ。聞いてみると、俺がコーヒーを買った時、後ろに“白いウェアの髪の長い女性”が寄り添っていたように見えたって言うんだよ。」

俺は思わず息を呑んだ。

「……やっぱり見えてたのか。」

友人は低い声で続けた。

「どうもこの地方では、まれにそういうことがあるらしい。だから俺も話をすることにしたんだ。すると、店内が急に家鳴りし始めた。木の梁が軋むような音が、天井から壁から、あちこちで鳴り響いて……まるで誰かが歩き回っているみたいだった。」

俺:「……それで?」

友人:「1時間半くらい話していると、家鳴りは少しずつ収まっていった。ようやく静かになったと思ったら、さらに半時間ほど経ってから、その女性が『実は教えておきたいことがあるんです』って言ったんだ。」

俺は身を乗り出した。

「……何を?」

友人はグラスを握りしめ、声を震わせた。

「その女性が言うには――“白いウェアの女は、必ず誰かに寄り添って現れる。でも、寄り添われた人は決して長く雪山に通えない”って。昔から、この地方ではそう囁かれてるらしい。寄り添われた人は、次の冬を迎える前に……必ず姿を消すんだって。」

俺は背筋に冷たいものが走った。

「……お前、それを聞いてどうしたんだ?」

友人は深く息を吐き、グラスの酒を一気に飲み干した。

氷がカランと音を立て、店内のざわめきに溶けていく。

その仕草は、話の終わりを告げるようでもあり同時に、まだ何かを隠しているようにも見えた。

俺は息をつき、肩の力を抜いた。

「……なるほどな。怖い話としては十分だろ。」

だが、友人の目はどこか遠くを見ていた。

まるで、まだ語られていない続きを抱えているかのように。

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