蔵に眠るひと 12
母屋に案内され、
客間に通されると、
湯気の立つお茶がすぐに出された。
畳の匂いと、
急須から立ち上るほうじ茶の香りが混ざって、
さっきまでの蔵の冷気が少し遠のく。
親父さんは湯呑みを置きながら、
申し訳なさそうに頭を下げた。
「ほんま、うちの息子が迷惑かけて……すまんかったな」
「気にしないでください。
骨董品って、だいたい何かしらありますし」
そう明るく返すと、
親父さんは少しだけ表情を緩めた。
空気が少し重かったので、
俺は友人の方へ向き直り、
わざと軽い調子で話を振った。
「そういや、お前最近どうよ?
仕事とか、なんか変わったことあったんか」
「いやぁ……まあ、ぼちぼちやな。
年末でバタバタしてるくらいや」
友人も、
さっきまでのバツの悪さを隠すように笑って返す。
そこからしばらく、
他愛もない話を続けた。
昔の遊び場の話、
最近の仕事の愚痴、
年末の買い出しが面倒くさいだの、
そんな普通の雑談。
客間の空気が、
ようやく少しだけ柔らかくなった頃、
俺のスマホが震えた。
画面を見ると、住職からの着信。
胸の奥が、すっと冷える。
「……住職さん、着いたみたいや」
そう告げると、親父さんも友人も、一瞬だけ表情を引き締めた。
親父さんも、
湯呑みをそっと置き、
深く息を吐いた。
「……ほな、行こか」
嵐が、
いよいよ玄関先まで来たような気配がした。




