表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
168/279

蔵に眠るひと 12

母屋に案内され、

客間に通されると、

湯気の立つお茶がすぐに出された。

畳の匂いと、

急須から立ち上るほうじ茶の香りが混ざって、

さっきまでの蔵の冷気が少し遠のく。

親父さんは湯呑みを置きながら、

申し訳なさそうに頭を下げた。

「ほんま、うちの息子が迷惑かけて……すまんかったな」

「気にしないでください。

 骨董品って、だいたい何かしらありますし」

そう明るく返すと、

親父さんは少しだけ表情を緩めた。

空気が少し重かったので、

俺は友人の方へ向き直り、

わざと軽い調子で話を振った。

「そういや、お前最近どうよ?

 仕事とか、なんか変わったことあったんか」

「いやぁ……まあ、ぼちぼちやな。

 年末でバタバタしてるくらいや」

友人も、

さっきまでのバツの悪さを隠すように笑って返す。

そこからしばらく、

他愛もない話を続けた。

昔の遊び場の話、

最近の仕事の愚痴、

年末の買い出しが面倒くさいだの、

そんな普通の雑談。

客間の空気が、

ようやく少しだけ柔らかくなった頃、

俺のスマホが震えた。

画面を見ると、住職からの着信。

胸の奥が、すっと冷える。

「……住職さん、着いたみたいや」

そう告げると、親父さんも友人も、一瞬だけ表情を引き締めた。

親父さんも、

湯呑みをそっと置き、

深く息を吐いた。


「……ほな、行こか」


嵐が、

いよいよ玄関先まで来たような気配がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ