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蔵に眠るひと 11

住職の言伝をそのまま親父さんに伝えると、

親父さんは腕を組んだまま、しばらく黙り込んだ。

その横顔には、迷いと、責任と、現実的な悩みが入り混じっていた。


掛け軸に他の謂れがあるのかもしれない。

もしかしたら値打ち物かもしれない。

家の解体費用だって馬鹿にならない。

売れるものなら売りたい。

そんな思いがちらついているのが分かった。


けれど、

その迷いの奥に、

“あれを家に置いておくのは良くない”

という確信のようなものも見えた。

やがて、親父さんは深く息を吐き、

静かに頷いた。

「……お願いしたい。

 もう、あれは家に置いとくもんやない」

その言葉は、

覚悟を決めた人間の声だった。

隣にいた友人は、

居心地が悪そうに肩をすくめていた。

「……ごめんな。

 なんか、俺のせいで」

どうやら、

俺が住職と話している間に、

親父さんからだいぶ絞られたらしい。

「気にすんな。

 お前が悪いわけちゃうし」

そう言って軽く肩を叩くと、

友人はほっとしたように小さく息を吐いた。

その場でスマホを取り出し、

住職に折り返しの電話をかける。

「……はい。

 先ほどの件ですが、

 所有者の方が処分をお願いしたいとのことです。

 できれば、すぐに引き取りに来ていただければと」

住職は短く、しかしはっきりと答えた。


「承知しました。

 すぐに向かいます」


電話を切った瞬間、

胸の奥にあったざわつきが、

少しだけ形を変えた。

“これで終わる”という安堵と、

“これから始まる”ような不穏さが、

同時に胸の中で揺れていた。

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