表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
166/296

蔵に眠るひと 10

住職は、呼び出し音が一度鳴っただけで電話に出てくれた。


「はい、○○寺でございます」


その落ち着いた声を聞いた瞬間、

胸のざわつきが少しだけ和らいだ。

「以前、そちらに……手鏡の供養をお願いした者なのですが」

名乗ると、住職はすぐに思い出してくれたようだった。

「覚えておりますよ。

 あの鏡は、無事におさめさせていただきました。

 今回は、どうされましたか?」

その丁寧で静かな声に、

俺は蔵での出来事を順を追って説明した。

掛け軸の女と目が合ったこと。

胸騒ぎが続いていること。

親父さんの話では、

“夢に出る”“欲しくなる”“飾りたくなる”という性質があること。

住職は、途中で口を挟むことなく、

ただ静かに聞いていた。

説明を終えると、

少し間を置いて、住職が言った。

「……あなたは、そういうものに“好かれる”のかもしれませんね」

その言葉が、妙に胸に落ちた。

「少し確認していただきたいのですが、

 今の所有者の方──そのご家族の方々は、

 その掛け軸を必要としておられますか?」

「いえ……多分、必要ではないと思います」

「もし処分されるおつもりがあるなら、

 すぐに伺います、とお伝えください」

住職の声は穏やかだったが、

その奥に“急いだ方がいい”という気配があった。

「分かりました。

 すぐ確認します。

 折り返しますので…」

そう言って電話を切った。

スマホを握ったまま、深く息を吐く。

これは、早めに動いた方がええ。

そう確信しながら、

母屋へ向かって歩き出した。

玄関の前では、

親父さんが腕を組んで待っていた。

表情はさっきよりも硬い。


「……どうやった?」


俺は軽く頷き、

住職の言葉を伝えることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ