蔵に眠るひと 8
親父さんは、掛け軸の話をしたあと、
何か言うかどうか迷っているように、
口を開きかけては閉じる、そんな間が続いた。
その沈黙が妙に重い。
やがて、
決心したようにこちらを見て、
低い声で言った。
「……もしかしてやけどな。
掛け軸の絵の女と……目ぇ、合ってないか?」
その瞬間、
背筋に冷たいものがスッと走った。
あの蔵の奥で、
懐中電灯の光の中で、
女性の目がこちらを追ってきたように見えた。
気のせいだと思い込もうとしていたのに、
親父さんの言葉で、
その感覚が一気に現実味を帯びた。
「……合った、気がします」
自分でも驚くほど素直に言葉が出た。
「最初は気のせいやと思ったんですけど……
出るまで、ずっと気になってて。
なんか、見られてる感じがして」
親父さんは、
その言葉を聞いた瞬間、
ほんのわずかに肩を落とした。
まるで、
“やっぱりか”
と言いたげな、
諦めの混じった仕草。
友人も横で息を呑んでいる。
親父さんはしばらく黙ったまま、
遠くを見るような目をしていた。
その沈黙が、
蔵の冷気よりもずっと冷たく感じた。




