表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
162/281

蔵に眠るひと 6

掛け軸の前でしばらく立ち尽くしたあと、

俺は振り返って友人を呼んだ。


「おい、ちょっと来てくれへん?」


懐中電灯の光が揺れる中、

友人が奥の間まで歩いてくる。

その足取りが、どこか重い。

「……なんだよ」

「この掛け軸、なんか知ってるか?

 謂れとか、誰が描いたとか」

光を当てると、

友人の顔が一瞬だけ引き攣った。

「いや……知らねぇ。

 こんなの、見たことねぇよ」

「親御さんとかは?

 お前んとこ、代々の家やろ。

 何か聞いてへんのか」

少し追求するように言うと、

友人は視線を逸らしながら、

小さく首を振った。

「分からん。

 俺、蔵に入ったの……こないだが初めてなんだよ」

「初めて? お前んちの蔵やのに?」

「いや、昔から“入るな”って言われててさ。

 鍵も親父が持ってたし……

 今回の整理で、ようやく開けたんだよ」

その言い方が、

“知らない”というより、

“触れたくない”に近い響きだった。

蔵の中の空気が、

さっきよりも冷たく感じる。

「……まあええわ。

 一旦外出よか。

 親御さんに聞いてもらおうや」

「……ああ」

友人はどこかホッとしたように頷いた。

蔵の扉を閉めると、

外の空気が妙に暖かく感じた。

さっきまでの胸騒ぎが、

少しだけ和らぐ。


「親父、家にいるから……聞いてみるわ」


友人はそう言って、

母屋の方へ歩き出した。

その背中が、

どこか急いでいるように見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ