蔵に眠るひと 3
翌日。
朝起きて、しばらく天井を見つめたまま動けなかった。
年末の空気って、なんでこうも身体を重くするんやろな……とぼんやり思いながら、
「……まあ、行くか」とようやく布団から出た。
服は、汚れてもいいやつ。
でも、あまりにもボロいのは気が引けるから、
そこそこマシなスウェットと上着を選んだ。
作業用の手袋も何双かバッグに突っ込む。
骨董品を触るなら、素手は避けた方がええやろ……と、
なんとなくの判断で。
準備を終えて車に乗り込むと、
今日は妙にダーク系のラップやレゲエが聴きたくなった。
重たいビートが車内に響いて、
外の冷たい空気と妙に合っていた。
ナビに共有された住所を入れて走り出す。
街は年末らしく、どこか落ち着かない。
人も車も多いのに、空気だけが妙に静かや。
しばらく走って、
目的地の近くに差し掛かったとき、
ナビが示した方向に視線を向けて、思わず声が漏れた。
「……でっか」
そこには、
古いけれど立派な造りの大きなお屋敷があった。
門構えからして、普通の家とは格が違う。
敷地の奥に母屋が見えて、そのさらに裏手に蔵らしき影がある。
車を停めて、
「着いたで」と友人に連絡を入れる。
数分も経たないうちに、
母屋の玄関から友人が出てきた。
「おー!来てくれたか!」
手を振りながら、
昔と変わらん愛想の良さで近づいてくる。
ただ、笑っているのに、
どこか“疲れ”みたいなものが滲んでいた。
「遠いとこ悪かったな。
寒かったやろ?」
そう言いながら、
友人はいつもの調子で肩を軽く叩いてきた。
その仕草は懐かしいのに、
どこかぎこちないようにも見えた。




