蔵に眠るひと 2
「……仕方ねぇなぁ」
思わずため息が漏れた。
年末で家の中は散らかってるし、
大掃除で腰は痛いし、
正直、外に出る気なんてまったくなかった。
「でも、お前んとこ……変な物とかはないんだろ?」
念のため確認すると、
電話の向こうで一瞬だけ沈黙が落ちた。
「いや……俺じゃ分からん」
「分からんってなんやねん。
お前、そういう曖昧な言い方するとき、だいたいロクなことないやん」
「いや、マジでそうなんだって。
なんとなく……“お前呼んだ方がええ”って思ってよ」
「なんとなくで呼ぶなや。
こっちはもうコタツに根生えてんねんぞ」
「分かる。俺も出たくねぇ。
でもよ……なんか、触りたくねぇ感じのが混ざってんだよ。
説明しづれぇけどさ」
向こうの声が、
さっきまでの軽さを少しずつ失っていく。
「骨董品の価値とか、俺もそんな詳しいわけちゃうぞ」
「価値とかじゃねぇんだよ。
なんか……“見てもらった方がええ”って感じがしてさ。
俺じゃ判断つかねぇ」
「……はぁ。
年末にそんな話持ってくんなよ。
こっちはもう、今日の晩飯どうしようかってことで頭いっぱいやのに」
「悪いって。
でも、頼むわ。
お前しか思いつかねぇんだよ」
その言い方が、
懐かしい友人の“軽いお願い”というより、
どこか切羽詰まった響きに変わっていた。
「……で、明日空いてんのか?」
「空いてる。
どうせテレビも特番ばっかだしな」
「なら、行くわ。
場所だけ共有してくれ」
「今送る。
あ、家の前に車停められるから。
蔵は裏手や。着いたら声かけてくれ」
「了解。
……ほんまに変なもんちゃうやろな?」
「それは……来てから見てくれ」
また、妙な間が落ちた。
その沈黙が、
年末の静けさよりも重く感じた。




