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温泉街からの同行者後日譚

翌日。

昼過ぎになって、ようやく気持ちが落ち着いてきた頃、

俺は友人に電話をかけた。

「昨日はほんま……ありがとうな。

 あんな時間に呼び出してもうて、悪かったわ」

電話の向こうで、友人がふっと笑った。

『ええって。

 お前と付き合いあると退屈せんな、ほんま』

「いや、そんなつもりないんやけどな……」

『分かってるって。

 でもまぁ、無事でよかったわ』

声のトーンは軽い。

昨日の恐怖が嘘みたいに、

いつもの友人の声だった。

『なぁ、また温泉行こうや。

 今度は昼間にな。

 泊まりで行って、例の居酒屋案内してくれや』

「おう、ええで。

 あの店、ほんまに美味かったしな。

 昼間なら……まぁ、大丈夫やろ」

『せやな。

 夜の山道はもうええわ』

二人で少し笑った。

その笑いが、昨日の恐怖を少しずつ溶かしていく。

電話を切ったあと、

ふと気になって地図アプリを開いた。


声が消えたあたり。


高速の県境から15キロほど走った地点。

あの“ぷつん”と笑い声が途切れた場所。

地図を拡大すると、

道路のすぐ近くに、小さな神社のマークがあった。

「……神社……?」

鳥居のアイコンをタップすると、

地元の人しか知らなさそうな、

小さな祠のような神社の名前が出てきた。

昨日のあの瞬間、

肩の重みが消え、

車内が暖かくなり、

笑い声が途切れたあの一瞬。

直感的に思った。

助けてもらったんかもしれん。

もちろん、気のせいかもしれない。

偶然かもしれない。

ただのタイミングの問題かもしれない。

でも、

あの夜の“あの感じ”を思い返すと、

どうしても無関係とは思えなかった。

「……行こか」

その日の夕方、

俺はその神社に向かうことにした。

何も起きないかもしれない。

何も感じないかもしれない。

でも、

感謝する気持ちだけは、

ちゃんと伝えたかった。

昨日、

あの高速の闇の中で、

確かに“何か”に救われた気がしたから。

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