温泉街からの同行者6
『……なぁ、また聞こえたで。
さっきよりハッキリや』
「いや、ほんまに俺にはなんも聞こえへんって。
エンジン音しかせぇへん」
『いや違う。
もう囁きとかのレベルちゃう。
“声”や。
女の声やと思う』
「……マジで言うてる?」
『マジや。
お前のすぐ横で喋ってるみたいな距離や』
「やめろって……
ほんまに怖いねんから」
高速を走る車内は、
外よりも静かで、
友人の声だけが耳に刺さる。
その瞬間だった。
左肩に、
“そっと手を置かれたような重み”が落ちた。
一瞬、心臓が跳ねた。
「……っ、ちょ、待て……今……肩……」
『どうした!?』
「今……肩に……
手ぇ置かれたみたいな……重み……
なんか……触られた……」
友人の声が一気に変わった。
焦りとかじゃない。
“恐怖を隠せてない声”になった。
『おい……マジで言うてるんか?
ほんまに?』
「気のせいかもしれんけど……
でも……今のは……」
『……っ、あかん。
お前、ほんまに急いで帰れ。
今すぐ。
高速そのまま走れ。止まるな』
「なんでそんな焦ってんねん……」
『さっきからな……
お前の声の後ろで聞こえてた“囁き”……
今、はっきり聞こえたんや』
「……なんて?」
『分からん。
でもな……
“お前のすぐ耳元で喋ってる”みたいな距離やった』
「……っ……」
左肩の重みは、
気のせいと言い切れないほど“そこにある”。
『なぁ……
今も聞こえてるで……
ずっと……ずっと囁いてる……
お前の声に重なるみたいに……』
「……やめろ……
ほんまに……やめてくれ……」
『悪化してる。
さっきよりずっと近い。
お前の……すぐ横や。
ほんまに“そこ”におるみたいな声や』
友人の声は震えていた。
あなたの呼吸も乱れていく。
高速の街灯が流れていくたび、
肩の重みが“少しずつ強くなっている気がした”。




