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温泉街からの同行者2

美味しい料理に、店主の老夫婦との会話。

今日は俺以外にお客さんがいなかったせいか、

話題がひとつ終わるたびに、また次の話が自然と始まった。

「最近はねぇ、若い人も減ってね」

「そうそう。昔は夜遅くまで賑やかだったんだけど」

そんな夫婦の掛け合いを聞きながら、

俺は相槌を打ったり、たまに質問を返したりしていた。

酒は入れていない。

けれど、料理の温かさと、

二人の穏やかな声に包まれていると、

時間の流れがゆっくりになっていく。

ふと時計を見ると、入店してから三時間が経っていた。

「え、もうこんな時間ですか」

思わず声が漏れる。

「あら、ほんとだねぇ」

奥さんが笑う。

「てっきり泊まりの人かと思ってたよ」

店主がそう言うと、

奥さんも「あたしもそう思ってた」と頷いた。

「いえ、今日は日帰りで……このあと帰ります」

そう伝えると、

二人は少しだけ申し訳なさそうな顔をした。

「そっかぁ……せっかく来てくれたのにね」

「もっとゆっくりしていけばよかったのに」

「いえいえ、十分ゆっくりできました。

 料理もすごく美味しかったです」

そう言うと、

老夫婦は安心したように微笑んだ。

店を出ると、

温泉街の夜は静かで、

昼間の賑やかさが嘘のように落ち着いていた。

湯冷めしないように上着の襟を立てながら、

俺はゆっくりと駐車場へ向かった。

駐車場までの道のりは特に何もなかった。

温泉街の夜は静かで、街灯の下を歩くと、

身体の芯にまだ温泉の熱が残っているのが分かる。

ただ、歩きながらふっと眠気が差した。

「……ちょっと眠いな」

独り言のように呟き、

ポケットからスマホを取り出す。

このまま黙って運転するより、

誰かと話していたほうが眠気も紛れる。

そう思って、知り合いにメッセージを送った。

『今から帰るんだけど、通話できる?』

数秒後、画面が光る。

『いいよ。大丈夫』

短い返事だったが、それだけで十分だった。

車に近づきながら、

バッグの中からイヤホンマイクを取り出す。

コードをスマホに差し込むと、

小さく“カチッ”と音がした。

「よし……」

エンジンをかける前に、

まずは声を聞いておこうと思い、

イヤホンマイクのスイッチを押して通話を開始した。

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