カーナビとの深夜のランデブー2
「空き地に着いた瞬間にな、
“ここに留まったら絶対あかん”って思ってん」
俺がそう言うと、
女友達は眉をひそめて身を乗り出した。
「……あんた、そういう時の勘だけは鋭いけぇな。
なんか“おる”感じしたん?」
「いや、“おる”っていうより……
“ここで止まったら帰られへん”って感じやった」
「うわ……それ一番嫌なやつじゃ」
「せやろ。
で、もう怖いとかより“ここはあかん”って気持ちが勝って、
無理やりUターンしてん。
夜景撮った駐車場まで戻ったんよ」
「戻れたんじゃな……」
「戻れたけどな、
その間ずっとナビの音声出ぇへんねん」
女友達の表情が固まる。
「……また黙ったん?」
「そう。
画面は動いてんねんけど、
音声だけ完全に死んでる。
なんか腹立ってきてさ」
「分かるわ。怖いより腹立つ時あるよな」
「せやねん。
で、来た道なんとなく覚えてたから、
“もうナビ無視して帰ったるわ”思て、
道変えて無理やり走り出したんよ」
「うん……」
「ほんならな…ナビが、Uターンさせようさせようってしてくんねん」
女友達の目が見開かれる。
「え、それ……
さっきの暗い道んほうに戻そうとしとるん?」
「そうとしか思われへん。
まるで“そっち行け”って誘導してるみたいやってん」
「……それ、ほんまに嫌なやつじゃ」
「せやろ?
で、無視して走ってたら、
ナビが“ルートを再検索します”って何回も言うねんけど……
全部、あの暗闇のほうに戻すルートばっかりやねん」
「……あんた、それ絶対行っとったら帰れんかったやつじゃ」
「俺もそう思う。
あの空き地で止まってても、
あの草ぼうぼうの道に入ってても、
なんか……
“帰って来られへん”感じがしてん」
女友達はしばらく黙って、
コーヒーをひと口飲んでから、ぽつりと言う。
「……あんた、呼ばれとったんじゃな」
「呼ばれたっていうより……
“連れていかれそう”やったな」
「どっちにしても、
あんた戻って来れて良かったわ。
ほんまに」




