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友人からのオモロい話3

友人は、網の上の肉をひっくり返す手を止めた。

さっきまでの軽口の気配が、すっと消えていた。

「……仕事行こうって、家出たんや」

ぽつりと落とすような声だった。

「うん」

「そしたらな……あの男の子、目の端にチラッと見える時が増えてきてん」

「……また?」

「“また”っていうか……なんか、普通に生活の中に混ざってきた感じやな。

玄関のとこで一瞬だけ見えたり、エレベーターの前で影だけ揺れたり」

友人は笑わなかった。

その表情が、冗談じゃないことを物語っていた。

「それが……だいたい三ヶ月前くらいやねん」

「三ヶ月……」

「せや。最初は気のせいやと思ってたけど……回数が増えてきてな」

そこで友人は一度、箸を置いた。

ウーロン茶のグラスを手に取るでもなく、ただ指先で縁をなぞる。


「んでな…」


言いかけて、ふっと黙った。


焼肉屋のざわめきが、急に遠くなった気がした。

換気の音だけが、低く唸っている。

友人は、少し間を置いてから続けた。

「……夜になると、部屋で“ぽーん……ぽーん……”って聞こえる日が、ちょこちょこあるねん」

その“ぽーん”という音が、頭の中で勝手に再生されて背筋が冷える。

「……また鞠の音か」

「そうや。あの時と同じ音や。

でもな……それだけやないねん」

友人は視線を落としたまま、声をさらに低くした。

「……誰かについて行くんか知らんけど、急に二、三日……居らんようになるねん」

「……居らん?」

「せや。音もせんし、影も見えへんし……気配が完全に消える。

“あ、どっか行ったんやな”って分かるくらいに」

友人はそこで、ようやく顔を上げた。

その目が、妙に疲れていた。

「……でな。

また、帰ってくるねん」

焼けた肉の匂いが急に重く感じた。

友人の言葉が、店のざわめきとは別の温度で胸に沈んでくる。

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