カメラバッグの謎4
出品者にメッセージを送ったあと、
スマホの画面を閉じて、しばらくそのままにしていた。
「まあ、すぐには返ってこないよな」
そう思っていたが、
一日経っても既読はつかない。
二日目も変わらず。
三日目になっても通知はなかった。
忙しいのかもしれない。
そもそも中古品の取引で、
“来歴を聞く”なんて面倒な話だと思われても仕方ない。
そう自分に言い聞かせながら、
四日目にはほとんど忘れかけていた。
五日目の夕方、
仕事から帰ってきて玄関で靴を脱いでいると、
ポケットの中でスマホが震えた。
画面を見ると、出品者からの返信だった。
胸が少しだけ跳ねた。
メッセージを開くと、文章は短かった。
「返信遅くなってすみません。
バッグのことですが……正直、あまりお話できることはありません。 それでもよければ、一度お会いしてお話します。」
どこか、
“乗り気ではない”
そんな空気が滲んでいた。
こちらとしてはクレームでも返品でもない。
ただ、少し気になっただけだ。
そう思いながら、丁寧に返信を打った。
「もちろん、無理にとは言いません。
ただ、バッグの来歴が少し気になっただけで……
お時間いただけるなら、少しお話を伺えればと思います。」
送信して数分後、すぐに既読がついた。
そして、少し間を置いて返事が来た。
「では、前に取引した場所の近くにある喫茶店で。
次の休日の昼過ぎなら行けます。」
文章は丁寧だが、
どこか“距離”があった。
まるで、 必要最低限のことだけを伝えているような、
そんな印象。
それでも、会えるならそれでいい。
バッグの来歴を聞くだけだ。
大した話ではない。
そう思いながら、次の休日を待つことにした。
休日の昼下がり、
以前取引した場所の近くにある喫茶店へ向かった。
店の前に立つと、胸の奥が少しざわついた。
緊張と不安。
だが、それは相手に迷惑をかけるような話ではない。
「ただ、バッグのことを聞くだけだ」
そう自分に言い聞かせて、
扉を押した。
店内は落ち着いた雰囲気で、
昼の光が柔らかく差し込んでいた。
奥の席に、 あの日と同じ女性が座っていた。
こちらに気づくと、軽く会釈をした。
その表情には、やはりどこか“話したくなさそうな影”があった。




