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とある地方での怖い体験 5

「来るな……来るな……!」独り言が震える。ハンドルを握る手は汗で滑り、タイヤは雪道で何度も横滑りする。車体が揺れるたびに、背後から迫る影が近づいてくるように感じた。

峠を抜けると、闇の中に御堂の灯りが見えた。雪に包まれながらも、立派で清潔感のある建物。最低限の灯りがともり、誰かが管理している気配がある。その光景に一瞬安堵するが、背後の気配は止まらない。

御堂の奥の駐車場に車を滑り込ませた瞬間、女は境内の入口で立ち止まった。まるで御堂に入ることを躊躇しているかのように。だが、ただ立ち尽くすその姿は、逆に不気味さを増していた。


「御堂……鐘……!」


老人の言葉を思い出す。車のエンジンは切らず、扉も開けたまま、俺は駆け出した。雪を踏みしめ、御堂の中へ。

鐘は奥にあった。

古びてはいるが、清潔に保たれている。その瞬間、背後で雪を踏みしめる音が響いた。女が境内に足を踏み入れたのだ。

御堂の灯りに照らされた女は、顔を歪め、鐘に近づこうとする俺を追い始めた。

「鳴らすな……と言っているようだ……!」声なき声が耳に響くように感じる。女は鐘が鳴らされるのを嫌がるかのように、雪を蹴り、こちらへ迫ってくる。

足は滑り、息は荒い。

「鳴らさなきゃ……鳴らさなきゃ……!」必死に鐘へ手を伸ばす。

御堂の灯りが揺れ、雪の闇が迫る。女の影が背後に伸び、冷たい気配が背中に触れようとしていた。



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