97. 新しい旅立ち
ーーー聖ピウス皇国教皇庁
枢機卿マルコは部下の闇ギルドからの報告を受けて苦りきっていた。
「竜人国に結界が張られただと」
「はっ、どのような状況か連絡がとれません」
「古代竜の卵が我々にどのような恩恵をもたらすのか分かっておるだろう。何としてでも奪ってくるのだ」
「しかし・・」
「出入りする商人はおるだろう。そやつらに金を握らせ忍び込め」
「しかし、何だって古代竜の卵を狙うんだ?」
「古代竜の卵には長い年月魔力が貯められる。それがある一定量に達すると孵化するのさ。恐らく、貯まった魔力を狙ったんじゃないか。獣人の魔力の何千倍にもなるんだから」
「彼らはその魔力を何に使うんだ?」
「多分、魔石に関係すると思う。きっと新しい武器か何かに使用するんだろう」
宮殿の談話室でアレク達が話をしていると侍従が国王の入室を告げた。
「この度は、古代竜の卵を守って頂き感謝する。古代竜は我らの守り神。数百年に一度しか卵を産まぬ。もしあれが盗まれれば数百年間我らは守り手を失うところであった。まさか王城警備の者が裏切るとは。アヘンとは恐ろしいものだな」
「アヘンの禁断症状は死ぬ苦しみだと聞き及びます。その苦しみから逃れるため、どんなことでもするのでしょう」
「昨日、捕まえた貴族達もアヘン中毒者だったと聞く。奴らは聖ピウス皇国との国境に所領を持っていた。領内に行方不明者が多数あるらしい。おまけに怪しい教会を領地に建てていた。そなた達には悪いが、この国を出る前にそこに立ち寄り、その教会を調べてはもらえぬか」
「わかりました。ただ、信頼できる騎士をお貸し願いたい」
「承知した。明日出発の際、引き合わせよう」
翌朝、アレクが厩に行くとクロックは大喜びだった。興奮するクロックをなだめつつ荷馬車に繋ぎ王城前広場に出てきた。
エルと一緒に1人の騎士がいた。
「ああ、あなたはあの時の」
「覚えておいででしたか。タンガと申します。宜しくお願いします」
「俺はアレク、そしてエル、セイガそしてロンです。宜しく」
「キュイ」「ウォン」
「それじゃあ、行こうか」
荷馬車に全員乗り込み、馬車は軽快に走り出した。