95. 春光祭 ⑥
ウォー 歓声が一際高くなった。竜王の谷へ行っていた竜達が戻って来たのだ。
白い旗を持って先頭を飛んでいるのは銀色の竜だった。続いて赤、黒、青と飛んできて銀色の竜の旗をなんとか奪おうとしている。しかし、銀色の竜はなんとか振り切って競技場へ着地した。
ドオーンという音と共に砂煙をあげながら着地すると人間型に変身した。
「サガンが優勝しました!」というアナウンスの声とともに歓声が沸き起こる。
その他の竜も次々に着地をし、砂煙の中現れた。
国王が立ち上がり、サガンを褒め称えると共に彼を栄誉ある騎士に任命すると宣言した。また他の竜も検討を称え用意した褒美の品を惜しみなく与えられた。
いまだ興奮冷めやらぬ会場の中、アレク達は怪しい人物がいないか探索を続けていた。
「セイガあの匂いはまだしているか?」
「今のところ匂いはないよ。でも美味しそうな匂いはいろいろするなあ」
と鼻をピクピクさせた。
「そういえば、昼まだだったな。エル、なにか食べたいものはあるか?」
「んー、あの串焼き美味しそう」
「じゃあ、何本か買ってきて」
エルが買いに行ったあと、嫌な視線を感じて俺は振り向いた。
男がさっと視線をそらし、人混みに消えていった。
俺は後をつけた。
男は人混みを抜けた後、屋台の陰にあった荷馬車に乗り込み発車させようとした。
「ちょっと待て」
アレクは荷馬車を止めた。
「何処へ行く?」
「私は用事が済んだので帰るところですが」
「俺達を見ていたろう?何故だ」
「なんのことですか。ああ、珍しい髪色の子がいたので見ていたのです」
「アレク~。どうしたの?」セイガが走ってきた。
「ああ、セイガ、この荷馬車に怪しい物は積んでないか」
「ちょっと待って」と荷馬車に乗って辺りを嗅いでいる。
「この荷馬車にあの煙と同じ匂いがするよ」
「ちょと、何するんですか」男がセイガを追い落とす。
「アヘンを載せているな。仲間はどこだ」
と、男はむりやり馬車を動かそうとした。
「フリーズ」とアレクが言うと、馬車の馬が固まった。
「畜生!」 男が短刀を振りかぶってきた。
「おっと」アレクはそれを避け、剣で男を峰打ちにした。
「セイガ、騎士を呼んできてくれ」
「わかった」セイガが走っていっった。
暫くすると、数名の騎士がやって来た。
「密売人の一味だ。荷馬車にアヘンを載せている」といって荷馬車の積み荷を見せた。
騎士は気を失っている男をみて驚いているようだ。
「この男は・・・」