93. 春光祭 ③
アレクが小屋の中へ踏み込むと、中には黒いフードをかぶった5人の男が一斉にアレクを見た。その手には水晶のような石を握っている。
「何をしている」
「・・・・」男達は無言でアレクに襲いかかってきた。
「バインド」光魔法で1人を拘束し,剣を抜いた。男達はアレクが魔法を使えることに驚いていたが構わず短剣を抜いて襲ってきた。
2人、3人と峰打ちにしたところで、セイガと騎士が現れた。
これまでと思ったか、自害しようとしたところでまた「バインド」という言葉と共に拘束される。
「セイガ、遅かったな」とアレクが言うと
「申し訳ありません。セイガ様のせいではなく、我々の落ち度です」といって隣にいた騎士が頭を下げた。
「第二警備隊の隊長がこやつらと組んでおりました」
「警備の兵に声かけたら追いかけ回されたんだよ。人通りもあったし魔法が使えなくてさ。ロンに念話を送って城から救援を送って貰ったんだ」
「ここの5人とあと、小屋の外に1人拘束して置きました」
「感謝します」
「あと、そこに寝ている人達はアヘンで眠っているようです」
「アヘンですか」
「この国は思ったよりアヘンが出回っているようだ。恐らくアヘンへの危機意識がないので簡単に依存してしまうようになったのだろう」
「それはどういう・・」
「アヘンは鎮痛や傾眠に効くから、気軽に始めてしまうが、その内止められなくなってしまう。恐ろしい禁断症状が出るんだ。それで続けていると、精神が犯されてくる。で、死に至る」
「それは、また、」
「そこの人達はアヘンの依存症にすでになっている。拘束したらどんなに苦しんでも叫んでも再びアヘンを吸わせたらたらだめだ。体の中からアヘンがなくならないうちは良くはならない。だからどこか収容施設を作って療養させたほうがいい」
「承知致しました」
「さてっと、祭りを楽しんでくるかな。セイガ、行くよ」
エルは噴水前で心細そうに待っていた。彼女の前にはすっかり冷めた戦利品が並べたままだ。
アレクとセイガが戻ると飛びついてきた。
「心配した」
「ごめん。だけど、やっぱりアヘンの密売人だった。小屋は押さえたからもう大丈夫だ。それより、買ってきた物がすっかり冷めちゃったね。温めるか」
セイガは温めた戦利品を頬張りながら「でも、警備兵がこの件に関わっているとなると厄介じゃない。きっとどこか同じような場所がありそうだ」
「キュイ」ロンも同意する。
「3日間でどれだけ見つけられるかだな」