84. ユークリッド王国の最後
「ええ。ユークリッド王国は500年ほど前に建てられた古い王国だったのですが、そこを守っていた聖女が秘宝と共に行方不明になったとか。一説では闇ギルドに襲撃されたそうです。聖女の加護がなくなった王国は飢饉や災害が続き、国が傾いていきました。そんなところを聖ピウス皇国が攻め込み滅んでいったとのことです」
「彼の国は、人間の国ながら我々とは敵対せず、ずっと友好関係を続けていたのですが」
国王は深い溜息を吐いた。
「恐らく、ロンを狙ったのもユークリッド王国で味を占めたのかも知れません」
「そんな・・・」エルの目には涙が溢れていた。
「貴女はユークリッド王国と何か関係があるのですか?」
「恐らくエルはその行方不明の聖女と秘宝に関係があるかもしれません」
国王達の目が驚愕に見開かれる。
「実はエルは12年前、『黄金の道』を使って逃げていた者が連れていた赤子なのです」
それから俺は、エルが女であること、義父の書いた遺書の内容等を国王と王妃に話した。
「まさかそのような事になっていたとは。それならば、貴女は結界の向こう側にいた方が安全なのでは?」
「ただ、向こう側にも闇ギルドの手が伸びているかもしれません」
と俺は、俺に起こったこと:幼い頃に暗殺されかけたこと、父王がアヘンによって眠らされていたことをかいつまんで話した。
「だから私は、アヘンには苦い思い出があります」
「どちらも時期が一致しているのだな」国王は思案気に呟いた。
ーーーこれには深い裏がありそうだな。
「このことは竜王様にご報告せねばなるまい。申し訳ないが、明日、竜王様の元へ同行して貰えるだろうか」
「わかりました。宜しくお願いします」と言って俺は頭を下げた。
部屋に戻ってからも、エルの涙は止まらなかった。
ロンとセイガは心配そうにエルに寄り添っている。
「エル、ユークリッド王国が滅んだという話はお前にとってショックだっただろう。だが俺は聖ピウス皇国をこのまま野放しにしてはならないと思う。どうして10年前いや12年前突然、闇ギルドなる者がお前を襲撃したか。アヘンしかりだ。この世界にはそれまでアヘン、それにマタタビの効能など知る者はいなかっただろう。その真相を俺は知りたいと思う」
「私もです。師匠」
「それじゃあ決まりだな。旅を続けるぞ」
「はい」
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