83. ロンの事情 ④
迫力ある晩餐が終わり、アレク達一行は談話室へ向かった。
談話室につくと、国王夫妻は人払いを命じた。
「これで気兼ねなく話せるだろう。アレクサンダー王子、エルさん、セイガ様、ロンを助けて頂き本当にありがとう。ロンは次代を担うこの国の宝なのだ」
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竜人の国は、竜種である王と純然たる古代竜の竜王によって統治される。竜種というのは、生れた時には竜として生まれ、成長するに従い竜人となるもののことだ。
竜種は王族からしか生まれない。1世代に2名までしか生まれないのだ。
そんな竜種を狙う者がいた。闇ギルドだ。
彼らは10年程前に現れ、今では他国を凌駕する聖ピウス皇国の中枢機関だ。
聖ピウス皇国はザビエルという人間の男が、この世界に蔓延する悪に立ち向かうために正教会を立て、自信が教皇に治まった。ザビエルに言わせると人間こそがこの世界の崇高な存在であり、汚らわしい獣人は隷属すべきだとする考えらしい。また、力を持つエルフや竜人は『悪』であり討ち滅ぼさなければならない存在らしい。
闇ギルドではアヘンを信者に蔓延させ教会への依存性を高めているという。さらに、魔石に魔力の高い獣人や竜人の血を吸わせ魔法を駆使していて、獣人や竜人の行方不明者があとを絶たないらしい。
そこでその闇ギルドに目を付けられたのが、生まれて間もない竜種の王子であった。
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「ロンは竜王様に魔力を分けて頂くために、竜王の谷に向かっている途中で襲撃を受け、行方不明となったのだ」
「そうでしたか。私達は魔の森にいる際に結界に強い衝撃を受け、その後この子を見つけたのです」
「結界の向こう側に行ってくれて幸いでした。でなければ・・」王妃は言葉を詰まらせた。
「キュイ、キュイ」
「それにしても聖ピウス皇国というのは向こう側では知られていませんでした」
「まだ、出来て間もない国ですからな。けれど瞬く間に、獣人の国を侵略しているのです。特に獅子王国は『マタタビ』という恐ろしい薬で軍が機能しなくなったとか」
ーーーーあー、獅子は猫科だからな。その辺の知識があるやつか。
「それに、人間の国であったユークリッド王国も聖ピサロ皇国に滅ぼされたとか」
「えっ、ユークリッド王国ですか?」
エルは思わず声を上げた。