82. ロンの事情 ③
神狼が居ると知って国王達は大層驚いた。
「これは・・皆様はただの旅のお方ではないようだ。夕闇もせまっておりますゆえどうぞ宮殿の方へお越し下さい」
アレク達は王城から宮殿へと場所を移した。
侍女に連れられ宮殿の客室に案内された。
「ロンは連れて行かれちゃったけど大丈夫かな」
「大丈夫だよ。だって王様達もあんなに喜んでいたじゃないか」
「でも、行方不明って言ってたよね。何があったんだろう?あの時、何かぶつかったようなすごい衝撃があって、ロンがいたんだよね」
「それは僕も感じた」
「あ~、いい風呂だった。お前達も入って来いよ」
「うん。今ね、あの時の衝撃について話してたんだ」
「あれか。無理矢理、結界をこじ開けたようだな。何にしてもロンは家族に会えたんだ。よかったじゃないか」
「じゃあ、お風呂入ってくるね。セイガも行こう」
一方、国王夫妻の居間では
「ああ、私の赤ちゃん」
「キュイ、キュイ」
「え、ロンという名前をいただいたの?」
「キュイ、キュキュキュイ、キュイ」
「それに魔力も頂いたって?そんな、私達でさえ魔力が足りなくて竜王様に分けて頂くことにしたのに。あのエルという子はそんなに膨大な魔力を持っているの?でも良かった。あなたが無事で」
「それよりも、ロンがあの子の契約獣になったとは。もう一人のアレキサンダー王子は神狼を契約獣にしているし、どうなっているのか。取り敢えず、晩餐の時間だ。彼らには訳を聞いてみよう」
晩餐の用意ができたと侍従が知らせに来て、俺達は後をついて行った。
王城の時も思ったが、この宮殿も馬鹿でかい。やはり竜を基準に作られているのか・・・
「ようこそ。ささ、こちらに参られよ」
「お招き頂き、ありがとうございます」
「堅苦しいことは無しだ。君達は『ロン』の命の恩人なのだから」
見ると、巨大なテーブルの上に牛や豚の丸焼きだのが所狭しと置かれている。
「驚いたかね。これが竜人国の料理だ。我々は姿は人間型を取っているがやはり中身は竜なのだ。このくらい食べなくては身が持たん」
「実際、驚きました。何もかも大きくて。まるで自分が小人になったようです」
「いや、そなた達はその体に見合わない位の魔力を有しているだろう?」
「食後に王の談話室にきてくれるか?いろいろ聞いておかなければならない事もあるだろうから」
「わかりました。お話しなければならない事が多々あるようです」