76. 珍しいお客様
「お前、人間型になれるのか?」
「うん、もちろん」
「そうか。俺はアレク、こっちがエル。よろしくな」
「よろしく。あと、ロンもな」
「キュイ」
「これからどうするの?」
「ああ、エルの訓練も終わったし一旦、街に帰る」
「やったー!”始まりの街”だろ?行ってみたかったんだ」
「そんなことより、セイガ、お前、オオカミ型に戻れ」
「ええー!折角人間型になったのに」
「お前、どうみても7~8才の男の子だろ?そんなのを連れて魔の森へ行っていたなんて問題にしかならん」
「ちぇ、分かったよ」とセイガは元の子オオカミに戻った。
俺達は橋を渡り”始まりの街”へ戻ってきた。
セイガはテンションMAXでチョロチョロとその辺を駆けずり回るので捕まえて俺の背嚢に押し込んだ。
冒険者ギルドにより、ホーンラビットの角と毛皮を換金し外へでると、エルが待ちかねたように走りよってきた。預けてあった俺の背嚢をみると、セイガが首を出し鼻をひくつかせている。
「師匠、帰る前に屋台で何か食べませんか?セイガが落ち着かないようで」
「何だか、美味そうな匂いがプンプンしてる。お腹減ったよ~」
「しょうがねえな。じゃあ、あそこのベンチで待ってるからエル、これでなんか買ってきて」とさっき換金した小銭を渡す。
「わかりました。セイガ待っててね」とエルは小銭を握りしめ走って行った。
「お前、エルにねだったな」
「だってエルだって食べたそうだったし」
エルが買ってきた串焼きをあらかた食べ終え、セイガは再び背嚢に潜り込んで寝てしまった。なんだかんだ言ってもまだ子供だ。
クロックとクロムを引き取り家路についた。
「ただいま、ジョン」
エルはそう言って、クロムを渡す。俺もクロックから降りて渡そうとしたところ、ジョンは何かに気づいたようだった。
「これはまた、珍しいお客様ですな」
「キュイ!」
それと同時にもう一匹も背嚢から首を出した。
「もう着いたの?」
人間の言葉を話すことに少し驚きつつもジョンは笑顔で挨拶した。
「ジョンといいます」
するとセイガはひょいっと背嚢から飛び出し伸びをして
「僕はセイガ。アレクと契約したんだ。それとあれがロン。エルと契約済み。一緒に『黄金の道』にいくことになったんだ。よろしくね」
「ねえ、アレク、ここでは人間型になった方が良いよね」
そう言って、セイガは光に包まれる。そうすると7~8才くらいの男の子になった。
それを見ながらジョンは苦笑し、「マリーもエミリーもきっと驚くでしょうな」