75. 魔の森で出会った奇妙な生き物 ③
「エルはオオカミ獣人を見るのははじめてか?」という俺の問いかけに、エルはコクリと小さく頷いた。
「彼らはズデーデン王国の西側一帯に住んでいる。普通は人間型をしているが、オオカミに変身することもできる。勿論、言葉も話せる」
「じゃあ、この子は・・・」
「この番小屋から向こうはズデーデン王国だ。恐らくそこから来たのだろう」
食べ終わった子オオカミは伸びをして
「ああー、美味しかった。ご馳走様。こんな美味しい物、初めて食べた。あれ、お姉さん、そこに珍しいもの入れてるね」といいつつロンを見た。
「お前、こいつが何なのか分かるのか?」
「ああ。竜族の幼生体だ。もう少し大きくなるまでは魔力を糧とする。その後は僕らと同じように成長するけどね。でも変だなあ。親が必ず側にいるんだけど」
「さっき、魔の森ですごい衝撃があったんだ。その後、衝撃があった辺りを見回っていたらこれがいた。恐らく結界に打つかって、こいつだけ飛ばされて来たのかもしれない」
「それは僕も感じたよ。だからわざわざ見に来たんだ」
「こいつは親の元へ返した方がいいのだろうか」
「いや、結界がある以上無理だ。それにこの子は貴方達の魔力を食べてしまっている。つまり貴方達が親と認識済みだ。おまけに名までもらっているのだろう?」
「キュイ」
「大事に育ててやってくれ。竜族は俺達にとって神に近い存在なんだ」
「ところで、お前は何なんだ?」
「僕は神狼。でも代替わりしたばかりで、まだこの大きさなんだ」
と子オオカミは尻尾を振って見上げてきた。
ーーーおおい、助けてくれ。ドラゴンにフェンリルか?なんでここに居る?
「僕、村にいたけど退屈で飽き飽きしてたんだ。そうだ、お兄さん、僕の名前考えてくれない?僕と契約を結ぼう」
「師匠、嫌だったら私が・・・」
「お姉さんはダメだよ。契約が永遠になってしまう。それにロンがいるし」
「契約を結んだらどうなるんだ?」
「契約が続く限り、僕はあなたを守るしあなたにも僕を守って貰う。僕は先代からの知識を共有しているからあなたにいろいろ教えてあげる事も出来る」
「どうしてそこまでしてくれるのだ?」
「1つはあなたは不可思議な何かをもっているから。(面白そう)。もう1つは『黄金の道』に赴こうとしているから。僕も行ってみたいと思っていたんだ」
「分かったよ。じゃあ、お前はセイガだ」と言った途端、セイガの体が輝いた。
「いいね。セイガか。ワオ~ン」
光が収まるとそこには白銀の髪をした男の子が立っていた。