7.義父 ロジャー・アレン ②
ロジャーは彼女の家のことを聞くと、すぐに行動を起こした。
長兄が王都に来ていたこともあり、長兄に今まで温めてきたプランを話した。
「兄さん、僕は商人になろうと思う。カレン郡でとれる上質の魔石、イザーク兄さんの所の素材等、これらを魔道具に換えて王都で売ろうと思っている。僕には将来一緒になりたいと思っている娘がいる。でもその娘の実家が破産して彼女は学院を去らなければならないんだ。魔導具科に通っていて成績も優秀だしとても才能のある娘なんだ。だから先行投資だと思って彼女の学院の費用を出して欲しい。僕が商会を立ち上げたあかつきには費用は倍にして返すから」
勢い込んで話すロジャーを半分あきれながら聞いたマイケルは
「お前、俺の補佐するために領地経営を学んでいたのではなかったのか。だが、、、まあいい。よほどその娘に惚れたな。まあ、悪い話ではなし、よいか。ただし、条件がある。まず、お前は学院をしっかり卒業すること。その後で商人になるなど好きにしろ。それから、彼女の費用を出す代わりに、彼女には卒業までに魔導具士の資格をとってもらう。結婚はこれらの条件を満たした上で考えてやる」
「ありがとう、兄さん、彼女に話してくる」
ロジャーは学院の女子寮に向かいメリッサに面会を求めた。そして ロジャーは別れを言いに出て来たメリッサを強く抱きしめ、自分の思いをつげた。
「メリッサ、僕と結婚してほしい。どうか僕とともに人生を歩んでくれないか」
しかしメリッサは彼の腕の中から強引に離れ、彼の目を見てこう告げた。
「それは出来ません、ロジャー様。私は平民落ちした没落貴族の娘。あなたは高位貴族のご子息。身分が違い過ぎます。私は明日、学院の寮を出て行きます。もう2度と会うこともないでしょう」
「だめだ、メリッサ。僕は君しかいない。貴族がだめだというのなら、僕が平民になればいい。僕は三男だから家を継ぐわけではない。僕は商人になる。前から考えていたプランがある。それには君の力も必要だ。今後のことは心配いらない。」
そして彼は長兄との話をし、彼女との将来の話をした。
俯いて話をきいていた彼女はだんだんと顔を上げ瞳にも光が戻ってきた。
「本当に私でいいんでしょうか。」
「君がいい。君しかいないんだ」
そうしてロジャーは無事学院を卒業し商人となり、そしてメリッサは優秀な成績で魔導具士の資格をとり学院を卒業した。
そして二人は王都で商会を立ち上げ、魔導具や素材を扱う店として有名になるまでにそれほど時間はかからなかった。