63. 因縁の双子
俺の連れてきた侍医長を見て、ケイダリア公は怒りでまっ赤になっていた。
「この者が宮廷医の最高医である侍医長になった理由をおぬしは知っておるのだろう?アレキサンダーが何故無気力になったのか。この者が発見したアヘンという麻薬でアレキサンダーを亡き者し、ひいては余も危ないところであったとはな」
「ふふふ、この話をすれば王家も困ったことになるのではないですか?アハハハハ、この王家が偽りの王家であることは紛れも無いこと。我がケイダリア家の初代が本来の後継者オットーと名を偽わらせ、双子の兄、ニールに王位をつかせたからだ。オットーは銀髪だった。だから王家に生まれた双子の銀髪は、我々が処分してきた。それなのに」と言ってアレキサンダーを睨みつける。
「何故、貴様は生き残っている」
「そうではない。お前達が恐れたのは、再びケン・サクライがこの世に現れることだ。ケン・サクライが予言をしていたな。そうであろう、セリーヌ侯」
そこにはセリーヌ侯がいた。老躯をおして王宮にかけつけたと思われる。
「はい、その通りでございます。我が家の初代が残した家訓がございますれば」
「おおかたケイダリア家の初代はケン・サクライが王家の双子、銀髪で生まれてくることを察したのだろう。違うか?」
「・・・・・」
「ケイダリア公、お前は俺が『魔法』を使えることは知っていたか」
といい、光の縄で彼を拘束する。
「なっ」彼の目は驚愕で見開かれる。
「ケイダリア家及びその一族は王族の命を危機にさらし国王までも弑しようとした罪により厳罰に処す」
「さて、王妃とアキレウス、お前達は俺がいないことをいいことにいろいろやってくれたようだな。言い訳は聞かぬ。2人を北の塔に閉じ込めよ」
兵達が3人を引き立てていった。
「アレキサンダー、王位をお前に譲りたいが」
「いいえ、お断りします」と俺はハッキリ断った。
「『俺にはすべきことがある。妨げてはいけない。』と北の地でオットーが予言したそうですよ。それに俺には優秀な弟がいる。父上にはまだまだ頑張っていただかないと。ケルティウスが大きくなるまであきらめてください。引退は許しませんよ」
国王は「いいよるわ」と苦笑した。
「それからキース、今回のことでわかっただろう。陛下には信頼する部下が必要だ。陛下の側にいてあげて。今まで僕に付き合ってくれて本当にありがとう」
それからは更迭された宰相を呼び戻し、乱されてしまった官吏達を元に戻したり、ズデーデン王国の者達を王の親書と共に送り出したりと忙しい毎日を送っていた。
「兄上、本当に行ってしまわれるのですか」と泣きそうな顔でケルティネスが聞いてきた。
「ああ、だが、いつか分からないけどきっと戻ってくる」
「きっとですよ。約束です」
それから、側にいるレイとキースに向かい
「陛下と弟を頼む」というと2人は黙って頭をさげた。
じゃあクロック、行こうか!
これで第二章は完結です。次章からはいよいよ本編に入ります。長かった~と思われている方も多いとおもいますが引き続き宜しくお願いします。