62. ケイダリア家の最後 ②
「アレキサンダー兄上!」
泣きながら俺の元に走り寄ってきた弟は
「やっぱり兄上が助けに来てくれたのですね。僕、信じていました。兄上が必ず助けてくれるのだと」と言って抱きついてきた。
「おおっと、悪い、陛下を寝室へ運びたい。案内してくれるか?」
「はいっ」
「何か陛下に消化の良いものを召し上がっていただきたい。料理人はいるか」
「兄上、料理人は奴らの手先です」
「そうか。なら仕方がない。俺が作るか。お前達も腹が減っていそうだな」といってオオカミ獣人達を振り返る。
「ええっ、兄上は料理も出来るんですか?」
「そうですよ。王子様。アレクの料理は絶品なんだ、なあ」とデレクがいうと皆がうんうんと頷いた。
「兄上、こちらの方達は?」
「ああ、学院の同級生だ。皆、俺を手助けする為にここまで来てくれたんだ。お前からもお礼をいうように」
「はい。皆さん、僕達を助けて頂き、本当にありがとうございました」
「いやあ、王子様にお礼を言われるなんて」と照れながら尻尾をブンブン揺らした。
それから俺は厨房に籠もり、王の食事(回復魔法付)と全員分の食事を作った。
食事は皆に好評で、特にケルティネスは目を輝かしながら頬張っていた。ここに移ってから禄な食事も与えられていなかったらしい。
翌朝、俺はキースを近衛に王が健在であることを知らせに走らせた。知らせを受けた近衛副師団長は転がるように離宮に来て、陛下の無事を確認し涙した。近衛師団長はケイダリア家の者で近衛全員が不満に思っていたことがわかった。
一方、王宮では国王が消えたことで大混乱になっていた。
俺は混乱の中、侍医長を捕まえ洗いざらい白状させた。それによると、この侍医長はアヘンの有用性に気づきケイダリア公に話したところ侍医長への昇格を条件に、幼い頃の俺にアヘンを吸わせたことを白状した。さらに陛下に一服盛り、弱っているところにアヘンを吸わせ続けたとのことだった。
真相が明らかになった時点で、国王は近衛兵達と俺、ケルティネスとソフィア妃を連れ王宮に戻った。
第一王子アキレウスと王妃、ケイダリア公が揃って謁見の間にいた。
「これはどういうことだ、アキレウス。そなたを王太子の地位から外したはずだが。余が病の時は、宰相にアレキサンダーを呼び戻すよう指示してあったのだが」
「ち、父上、誤解です。宰相が呼び戻さなかっただけで・・・」
「その宰相はどうした。なぜ、ケイダリア公がここにいる」
「そ、それは」
「あなた、何をいっているのです。アキレウスはこの国の第一王子。あなたに何かあった場合にはこの子が国政を執るのは当たり前ではないですか」
「黙りなさい、ヴィクトリア。ソフィアとケルティネスを離宮に監禁したのはその方だとわかっている」
「監禁などと。移っていただいただけですわ」
「食事も満足に与えなくてか」
「それとケイダリア公」
と国王は怒りの眼をケイダリア公へむけた。