61. ケイダリア家の最後 ①
俺は王都の手前で街道を外れ、森の中の開けた場所で休憩を取った。
ベルトランから駆け通し駆け通しだったため、皆疲労の色が濃い。
「皆、よく頑張ってくれた。後少しで王都だ。ここで後続を待ち、夜になるまで休憩する。但し、悪いが食事は携行食にしてくれ」
俺は主だった者を集めて作戦を告げた。
「まず、離宮の北側の塀から離宮内に侵入する。ここは森に面しているため警備も薄いはずだ。多分、離宮の制圧にそれほど時間は掛からない。制圧後はオオカミ獣人以外の者で離宮を死守すること。俺はオオカミ獣人をつれて王宮へ乗り込む。以上だ。何か質問はあるか?」
「ありません」
「決行は深夜の鐘が鳴った時とする。それまで充分に休養してくれ」
そしてデレクを呼び、
「離宮から王宮までは馬車で四半刻程の距離だ。一気に駆ける。そして王宮に着いたらお前達は物陰にかくれていてくれ。俺は単身王宮に侵入し陛下を連れ出し、離宮に戻る。その際の護衛を頼む」
「任せてくれ」
やがて夜になり、深夜の鐘が鳴った。
俺達は北側の森から塀を乗り越え離宮に侵入し、瞬く間に離宮を制圧した。離宮を囲む兵達もまさか今日襲撃があるとは思わなかったのだろう。
俺は襲撃の目処が着いたところで王宮に向かった。
王宮は夜間の警備兵だけでシンっと静まりかえっていた。手はず通りにオオカミ獣人達には物陰に潜んでもらい、俺は王宮に忍び込んだ。
そこでカシアス学院長直伝の闇魔法を駆使して王の寝室へ向かった。
入り口に詰めていた護衛を魔法で眠らせ寝室に滑り込む。寝室には甘い香りの煙がたゆたっていた。アヘンだ。素早く浄化の魔法をかけ、寝台に近寄ると王は眠っていた。揺すっても起きない。取り敢えず王にも浄化の魔法をかけてみるとうっすらと目を開けた。
「父上、お目が覚めましたか」
「おお、アレキサンダー。余はどうしたのだ」
「アヘンで眠らされておられました。まだ、影響が残って居るようなのでこちらのポーションをお飲みください。あと、回復魔法もかけさせて頂きます」
「何があった」ポーションで頭もハッキリしてきたのか王は即座に聞いてきた。
「薬物で眠らされた後、アヘンで陛下の意識を奪っていました。恐らく、ケイダリア家と侍医に何らかの繋がりがあると見てよいでしょう。兄上と母上の専横政治で貴族の不満が高まっています。取り敢えず離宮を制圧しましたので、これから離宮に移って頂き、体力の回復をして頂きます。父上を抱き上げることをお許しください」
といって、身体強化魔法を使い王を抱き上げ闇魔法を使い王宮の外へ出た。
離宮に戻った所、ケルティネスが入り口で待っていた。
「アレキサンダー兄上!」