57. ランカスターの攻防 ①
2日後、俺達はキリルの街に入った。
そこで思わぬ知らせを受け取った。ランカスターの領主シュゼイン伯爵が捕らわれているというものだった。3日前に王都から兵が送られ館に監禁されているというものだ。
恐らくこれは俺を王都に帰さないつもりだろう。
ズデーデン国王はこのことを憂慮し、俺に1個小隊を貸し与えてくれるという。
小隊長に案内され、小隊を見に行ったら驚いた。デレクをはじめ、あの時の魔法科のクラスメイト12名がそこにいた。
「よう、アレク、久しぶりだな」
「元気だったか」
「あのあとアレクがいなくなって寂しかったぞ」
と言って、尻尾をブンブン振りながら俺を取り囲んだ。
周りの兵士も生あたたかい目で俺たちを見ている。
「お前達、どうしたんだ?」
「俺ら、お前の一大事と聞いてこの隊に志願したんだ」
「伯爵、助け出すんだろ。任せてくれ」
ーーーーこいつら、本当に・・・・
「分かった。宜しく頼む」
俺とキースはその後作戦会議に移った。
ランカスターの港から下流3キロ程の所に、船が停泊できる場所があるという。
そう、造船所だ。敵の目は港に集中しているだろうから、ここから上陸し館の裏手に回り一気に館を落とすことになった。
館の裏手はかなり厳しい坂道になっているため、騎馬での行動が無理とのことだったが、こんな時こそオオカミ獣人の脚力がものをいう。
オオカミ獣人を先遣隊として、夜襲をかけることにする。
俺は身体強化を自身にかけオオカミ獣人と行動を共にし、キースは一個小隊を率いて港から異変を聞きつけて登ってくる兵士を迎え撃つため丘の正面に回ることとなった。
オオカミ獣人と小隊の兵士達は出航に向けて準備を始めた。
俺にとっては初めての戦いだが、冷静に対処できるよう、夜になるまでユックリと休養を取ることにした。
長くなるので2話に分けます。