55. レイからの手紙
卒業して2年経った。俺は未だズデーデン王国で魔術の研究に明け暮れている。
時折、本国から帰国要請がきたが、完全に無視をしている。帰国が危険なことは百も承知だからだ。
国の民の税金で暮らすのは忍びないので、ズデーデンの王立学院で講師をして暮らしている。
週に何回か獣人達に魔法を教え、あとはサイラス先生と魔術の研究をしている。そうそう、俺は住まいを寮から東の塔に移した。サイラス先生の食事は三食、俺の係となった。
そんなある日、久しぶりにレイから手紙が届いた。
レイは帰国後、騎士昇格試験を受け見事合格、近衛に配属されたようだ。現在は第三王子の護衛になっているらしい。
第三王子のケルティネスは聡明さは折り紙付で流石アレク様の弟君だと書かれていた。
ーーーん、腹違いのね
今は側妃様と共に離宮にお住まいになっているって離宮に移ったの?
陛下の容態が思わしくなく、現在、第一王子が政務をとっていること、宰相が更迭され、ケイダリア公と王妃様が専制政治を行っているが貴族達の反発も多く下手したら内乱になるかもしれないとのことだった。
さらに、ケルティネス様の聡明さが仇となり、第一王子に目をつけられていることなども書いてあった。
ーーーこれはどういう状況か、俺自身経験がある
王の容態が悪いってどういうことだ?俺に何も知らせが入ってきていない。
少なくともこの手紙よりも早く容態悪化の連絡が入るはずだ。
キナ臭さを感じ直ぐに帰国の準備に取りかかった。
カシアス学院長とサイラス先生には訳を話し、急遽帰国する旨を伝えた。
カシアス学院長は国王に連絡を取ってくれ、ヨルド川をすぐ渡れるよう手配してくれた。
サイラス先生からは物事が一段落したら、アインステッドに行って、『黄金の道』を探索して欲しいとお願いされた。(サイラス先生が行ってから数百年たっているらしい)
そうしてキースと俺はズデーデン王立学院を出、帰国の途についた。