51. 魔法使いへの道 ⑦
翌日、俺は張り切って東の塔へ向かった。
「何だか楽しそうですね」
「そりゃそうさ、キース。長年願っていたことだからね」
「殿下のそう言うお顔が見れて本当に良かったと思いますよ」
「キースも一緒に居られればいいんだけど」
「気にしないで下さい。ほら、東の塔に着きましたよ」
扉をノックすると、サイラス先生が出てきた。そしてキースは寮に戻っていった。
「おはよう、アレク」
「おはようございます。サイラス先生」
「君が来るのを待ちかねたよ。今日はどんな料理を作ってくれるんだい?」
ーーーどうやら先生は魔法より俺の料理に夢中らしい
「はい、後で倉庫の中の食材を見てからにします」
「期待してるよ」
今日は座学で術式魔法というものを学んだ。
魔方陣を書いて発動させる、あれだ。
ただこの世界では術式魔法というのは『古代魔法』にあたり現存していないそうだ。古代遺跡に書かれた魔方陣により『そういうものがあった』と分かっているだけで、実際、使える者はいないそうだ。
ちょっと残念に思ったが、今は先生が古代魔法語を研究していて、これが解明出来れば魔方陣を使った術式魔法が使えるかもしれない。
今日の昼食はポテトグラタンにした。先生は美味いといって2皿も平らげた。
明日はどうしようか悩んでいると、鳥肉があった。基本、エルフは菜食だが鳥肉は食べるそうだ。
よかった。これでレパートリーが広げられる。
東の塔の裏手は広大な草原が広がっていた。魔法実践の訓練はそこで行うらしい。
そこで俺は食後のハーブティーを飲んでいる先生にお願いしてみた。
「先生、ここに僕の馬で通ってきてはダメですか。僕を待っている間は草原に放牧したいんですが。とても賢い馬でいなくなることはありません」
先生はちょっと考えたあと
「ふむ、いいだろう」といって、フレアとアースを呼び出し外へ出た。
「厩を作る。この辺でいいか」と言って、見る間にレンガ造りの見事な厩舎を作り上げた。中には待合室らしきものもある。
「ここなら雨が降っても安心だし、君の護衛騎士もいちいち帰らなくても済むだろう?」
俺は感激して思わず先生の手を握った。
「先生、ありがとうございます。クロックのことだけでなくキースのことまで 考えて頂けたなんて」
「いや、美味しい料理のお礼ってことさ」といってウィンクした。
ーーーエルフがやると半端ねえ破壊力だ。
「それでは、午後の訓練を始めようか」
「君は火を現出できたね。ファイアーボールをあの的に打ってみてくれ」
俺は言うとおりファイアーボールを的に当てた。「すばらしい」
「それではあそこに案山子がある。それを燃やせるかね。ああ、ファイアーボールを使わず、案山子自身を燃やすんだ」
俺にそれはできなかった。
「じゃあ、まずこれからマスターしてみよう。フレア!」
「はいよ。オレ様が教えてやる」
「マスターしたら、呼んでくれ」
結局、その日のうちにマスターできなかった。
帰り際、明日からクロックに乗って通ってもいいこと、先生が立派な厩舎を作ってくれてキースが寮に帰らなくてもいいこと等を話しながら帰路についた。