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黄金の道   ~エルとアレクの物語  作者: 長尾 時子
第一章 エルとペンダント
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5.義父からの手紙

 翌日エルはマリーとともに義父の執務室へ入った。部屋の金庫にはこの家の財産目録、銀行預金の通帳、金塊や宝石、そして鍵束の下に遺言書とエル宛ての手紙が置かれていた。

遺言書には、この家の財産すべてをエルに相続させること、相続手続きやその他諸々の手続きは顧問弁護士であるハリー・ウォートンに任せることなどが綴られていた。

 

「マリー、ウォートン弁護士に急いで連絡をとってくれる?今後のことで話し合いたいたいから至急こちらにお越し願いたい旨を伝えて。あと王都からいらっしゃるから宿の手配もお願い」

「ウォートン弁護士には旦那様達が亡くなった日に手紙をだしておりますが、こちらに参られるには早くても1カ月後となります」

「そう・・・それまでにできるだけ書類の整理をしておこうか。ああ、昼食はこちらで食べたいから何か軽いものを用意してくれる?」

「かしこまりました」


 マリーが昼食の用意をするため部屋を出るのを確認してエルは自分宛の手紙をそっと開いた。


『 

  愛しのエルへ


 これを君が読んでいるということは、もう私達はこの世にはいないのだろう。願わくば、君が立派に成人していてくれるといいのだが。そればかりはどうにもならない。

 君は私達の本当の子供ではない。それは君もうすうす感じていただろう。外見だけでも黒髪にに紅い瞳を持つ君は、この国では稀有な存在だ。

 私達が君にであったのは、今から11年前の秋分の日。街の喧噪も落ち着きをみせる夕方、薬師のところ から持病の薬をもらい護衛のジョンが馬車を廻してくるのを待っていたのだが、その時、路地裏から微か に、赤ん坊の泣き声が聞こえてきたんだ。不審に思って妻のメリッサが除いてみると、黒いローブ姿の男が大事そうに赤ん坊を抱えてうずくまっていた。私とメリッサは慌てて男を助けおこし、薬師のもとへ運んだのだが、血が流れすぎて手遅れだった。


 男は自分は黄金の道の先にあるユークリッド王国の者であること。この赤ん坊はやんごとない姫君で、追手から逃れるため黄金の道の秋分点を利用し、こちら側へ来たこと。どうか姫君には平穏な暮らしをさせてほしい。そして彼女が成人したあかつきにはこのペンダントを渡して欲しいと、見事な紅玉のペンダントと幾ばくかの金塊を懐から取り出し息絶えたのだ。

 私はユークリッド王国なんて知らなかったが、黄金の道の先にあると聞いて納得もしていた。

 私達は薬師に金を払い、男を丁寧に埋葬してくれるよう頼み、店をあとにした。

 もちろん、こんな可愛い娘ができたことを神に感謝しながらね。


 だけど不安もあった。追手が来たら私達にはどうしようもない。だから、不本意だけど君には男の子に なってもらうことにした。

 

 私達の可愛いエル。もし私達のお迎えが君の成人前にきてしまっても心配いらない。

 君のことは甥のリチャード・アレン辺境伯に後見してもらうよう頼んでいるし、ウォートン弁護士には 相続の手続き等一切を任せている。


 最後にペンダントだが、机の引き出しの奥の隠し引き出しの中にある。


 愛するエル、君の未来に幸多からんことを



                         ロジャー・アラン 』            

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