410. 国の形 ③
「エル・・・エル・・」
エルは目を開け、周りを見渡すが誰もいない。ふと胸元に目をやると、ペンダントが点滅している。ペンダントを握り締めもう一度目を瞑る。
「エル・・・私はユイ。ラルフ王国の唯一の王女ユイ。そしてシン・サクライの妻であり貴女の産みの母。貴女に伝えたい事があるの。それは・・・」
そこでエルの意識が途切れた。
「ここは・・・」
エルが目を覚まし、辺りを見廻す。するとロンが飛んできた。
「エル~、やっと目覚めた」
ロンがエルに飛びついた。「エルが起きないからどうしようかと思った」
「エルはあの廟で倒れたんだよ。全然目を覚まさないから、僕がゴランの街まで運んだんだ。シグルドにお願いしてエルを寝かして貰った。エルったら3日も目を覚まさなかったんだから」
「廟は、廟はどうなったの?」
「エルを表に出したら、勝手に扉が閉まったけど」
「そう・・・」
エルは遠い目をして黙り込んだ。そんなエルをロンは注意深く見つめていたが、エルが口を開きそうにないのを見てそっと部屋を出て行った。
隣の客室にはアレクとセイガが泊まっている。ロンはゴランに着いてすぐ心話でアレクを呼んだ。アレクとセイガはすぐに転移魔法でゴランに着いてエルを見舞ったが、エルは意識が無い状態が続いていた。アレクの治癒魔法も効果がない。シグルドにお願いして3日間ゴランに滞在している。
「アレク、エルの意識が戻った」
「そうか」
アレクが隣室へ行こうとするとロンが止めた。怪訝な顔をするアレクにロンは「もう少しそっとして置いた方がいい。多分・・・」と言いよどむとアレクは
「どうしたロン、らしくないな」とロンを見つめた。
「エル、何か変なんだよ。物思いにふけるとか、遠くを見つめるというか。いつものエルじゃない」
「でもこのままと言うわけにはいかないだろう?それに目覚めたのなら水分を採った方がいい。取敢えず、ロン、お前が水を持って行け」
「うん」
ロンは水差しを持って再びエルの部屋を訪れた。
「エル・・」
「ああ、ロン。私ね、お母様に会ったの。そこでいろいろとお話を伺って・・・。お母様はユークリッド王国の前の王国、ラルフ王国の王女だったみたい。そのラルフ王国の前に古代王朝があったらしいんだけど大災厄で滅んだそうよ。誰もいなくなった荒野に人族が砂漠の向こう側から移り住んできたらしいの。彼らは『ユグドラシルの導きによって黄金郷からやって来た』人々だったらしいわ。彼らは荒れた大地を耕し、都市を築いた。そしてエルフの妻を娶りラルフ王国を築いたというの。長い間にエルフの力は失われたそうだけど、お母様は先祖返りだったみたい。そしてシン・サクライに会った。彼はこの世界の人では無かったみたい。そして私が生まれた。けれど異世界人、ヴァンパイアという種族との混血である私はこの世界が許さなかった。だからお父様とお母様は連れだってこの世界の根源であるユグドラシルが指し示す黄金郷へ向かったと言うの。私をこの世界に受け入れて貰えるように。そして私は受け入れられた。でも私が存在するにはこの世界の者と契りを交わし子孫を残さなければならないって。その可能性のある者に碧玉のペンダントを渡したと言っていたわ」
「えっ、それって」
「そう、この紅玉のペンダントと対をなす碧玉のペンダント」
ロンは絶句した。




