41. ズデーデン王立学院 ⑤
翌朝、朝早く起きた俺はホテルの中庭で素振りの稽古をしていた。高まる期待に気持ちが抑えられなかったからだ。
「朝から精が出ますね、殿下」
「おはよう、キース。なんだか落ち着かなくて」
「学院に行った後、殿下にはクラス分けの試験を受けて頂きます。その後、寮に入って頂きますが、護衛騎士は2名のみ、私とゴーシュが残り、後は帰国させます。身の回りのことは学院が用意したメイドに任せ ることとなります」
「そう、わかった。騎士達にはありがとうと伝えておいてくれ」
ズデーデン王立学院は険しい山の狭間にある丘の上に立っていた。
俺は驚愕で開いた口が塞がらなかった。それは俺がかつて観たことのある映画のホグワーツ魔法学院にそっくりだったからだ。
口を開けたまま周囲を見渡していると、学院の指導教官がきて試験会場へ案内された。
中には30人程の生徒が着席しており試験開始を待っていた。レイは別の教室に案内されており、お互いの健闘を祈ってそれぞれ別れた。
試験は午前中を使って行われ、午後にはクラスが判明する。
俺は問題なく出来た・・・と思う。試験終了まではかなり時間が余った。
その時間、一昨日の王城での国王との面談を思い出していた。
晩餐会の後、クリミア国王に秘密裡の面談を申し込んだ。暫くして侍従が呼びに来て、談話室へ通された。
「急な面談の要請に対しお受け頂き感謝します」
「秘密裡にとのことだったな。皆、席を外せ」と人払いをしてくれた。
「実は、私はズデーデン王立学院で魔法を学びたいと思っております」
「ほう。君は魔法が使えるのか?」
「多少ですが使えます。でもこれは私の護衛騎士であるキース以外誰も知りません」
「何か訳がありそうだな」
「王家に生まれた双子の話を先程致しましたが、双子の銀髪の方は皆若くして亡くなっているのです。私も10歳で落馬で死にかけました。目覚めた時に自分が魔法を使える事が分かったのです。それからはこのことを秘密とし、自分なりに魔法を訓練しておりました。何故、秘密にしたかというと『知られたらまずいことになる』という直感です。何故、銀髪の方が二十歳までに亡くなっているのか。このことに関係しているのではと思い到りました」
俺は一旦話を区切った。
「それで自分の身を守るため、海外へ出、尚且つ魔法の腕を上げて何らかの意図に対抗しようと思い、各国の学院を調べたところ、ズデーデン王立学院に魔法科があると知り、こちらに参りました」
「なるほどな。実は我が王家の者も若干魔法が使える。魔法が使える獣人族を従えているのはそう言う理由だ。君の髪色とアイスブルーの瞳は我が王家の色と同じ。魔法が使えるのも、そこになんらかの理由があるのかもしれん」
「君の言いたいことはわかった。君が魔法を学ぶことは国元には知らせないようにしよう」
「ありがとうございます」
そんな事をつらつら思い出していると、試験終了の合図がなった。
さて、どんなクラスになるのかな。