404. 王都への帰還
「オオーイ!イスタファン!」
全力で走ってきたセイガがイスタファンに向かって呼びかけた。
「セイガ様、どうしたのです?」
牧場の中程で走って来たセイガに気付きイスタファンは振り向いて答えた。
「アレクが法制と税制の猶予がないって言うから迎えに来た」
「そういうことですか。家畜の仕分けも終わったし、今日にでも戻ろうと思っていた所でした」
「馬で帰ると3日は掛かるだろ?だから僕が来たんだ」
「ということは・・」
「僕の背に乗ってくれ。今日中には王都に戻れる。早く乗って」
「あ、はい。後の事は頼む。ではセイガ様失礼します」
イスタファンは村人に後を託し、セイガに跨がる。セイガはイスタファンが跨がった途端に走り出した。
「うわあ、ちょっと、セイガ様・・」
「しっかり掴まってて」
セイガはそう言うと速度を上げた。イスタファンはセイガの背から振り落とされないよう必死に掴まっている。そんな二人の後ろ姿を村人達は呆然と見つめていた。
二人が王都に着いたのは翌日の明け方だった。夜を徹して走って来たのだ。そんな二人がアレクの執務室に駆け込んできたが、アレクは執務中だ。アレクもまた徹夜で執務を行っている。駆け込んだ二人に驚いていたが立ち上がってソファに座るよう促した。
「ただいま、アレク」
セイガは尻尾を振ってアレクを見た。褒めて欲しそうだ。
「お帰り、セイガ。随分早かったな。無理をしたんじゃないか」
「だって早い方が良いでしょ、ねえ、イスタファン」
セイガはイスタファンを見たが、イスタファンは息も絶えだえだ。ソファの上で延びている。
「お前、イスタファンは普通の人間だ。手荒に扱ったらどうなるかくらい分かるだろう」
アレクはイスタファンに回復魔法を掛けながらセイガに言った。
「すみません、アレク様。もう大丈夫です。私はもう少し強くならなければいけないようです」
「無理するな。そうだ、腹が減ったろう。今、出してやる」
アレクが食事をテーブルに並び始めるとイスタファンのお腹が鳴った。そう言えば領地から食べ物は口にしてない。ビーフシチューの良い香りが鼻孔をくすぐった。横を見るとセイガがお皿に顔を突っ込んでガッついているのが見えた。おもむろに匙ですくって一口啜ると、後はもう脇目も振らず皿を空にした。
「ご馳走様」
セイガが満足したように舌で口の周りを舐めている。そしてひょいっとソファに座るや否や寝る体制に入った。
「ご馳走様でした」
「満足したか?」
「ええ、アレク様の料理はいつ食べても美味しいです」
「疲れただろう。今日はゆっくり休め。明日からは法制と税制をしっかり頼む」
「分かりました。法制の方は骨子が大体出来ていますが、税制の方は各州知事や関連団体とで会議を開きたいと思っております」
「そうか。草案が出来次第見せに来てくれ」
「了承致しました」
「これでこの国の根幹が出来上がるな」
アレクは満足そうに頷いた。




