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黄金の道   ~エルとアレクの物語  作者: 長尾 時子
第十三章 移民開始

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396. ソーニア行

セルア国との国境を過ぎ、新生ユークリッド王国の街道を北上してソーニアの街に入るには馬車で3日かかる。最近、国交が回復した事を受けてソーニア行の馬車が定期的に運行されるようになった。その簡素な馬車に不釣り合いな2人が乗っていた。他の乗客達は彼らから視線を逸らし、見て見ぬ振りをしている。どう見てもお貴族様にしか見えない二人組に関わりを持ちたいと思う者はいなかっただろう。


「今夜はこの野営地で泊まります。馬車を降りる方は明日、日の出前にこの馬車に戻って来て下さい」


馭者はそう言うと、さっさと自分の野営の用意をしだした。野営地へ降りて、野営の準備を始める者、そのまま馬車で夜を明かそうとする者、様々だ。


「うっ、痛てててて。これが明日も続くのか?俺の尻がどうにかなりそうだ」

「何生ぬるいことを言ってるんですか。海の白鯨とも言われた船の船長が台無しだ。大体、馬で行こうというのを馬車に乗りたいと駄々をこねたのは貴方でしょう?」

「いやあ、乗馬は昔から苦手でな。馬は生き物だろう。加減がわからん」

「馬はいいですよ。可愛いし頭も良い。主のことを良く見ている」

「だからだよ。奴らは気に食わないと従わん」

「あー、はいはい。野営の準備をしますよ」


彼らは寝袋を担いで野営場の隅に移動する。イスタファンが焚き木を集め火を付けた。


「お前の火魔法、いつ見ても便利だな」

「まあこれぐらいしか魔法は使えないんですが。料理は船長にお願いします」


セオドアは袋から鍋と食材を出し、スープを作り始める。ぐつぐつと鍋が煮立ち良い匂いが辺りに漂い始めた。食器の中にスープを並々と入れ、固いパンに付けて食べた。


「美味いですね」

「だろ?今夜のスープはカツリの日干しを入れたスープだ。出汁が効いてるだろ?」

「流石、海の男ですね。昨日の出来とは雲泥の差だ」

「ああ、昨日は失敗した。陸の生き物は美味いかどうか分からん」

「多分、ウサギを捕まえてそのまま肉にして放り込んだからじゃないですか。陸の動物は『血抜き』というのが必要みたいです」

「何だ、知っていたならそう言えよ」

「いや、今日馬車の中の男がそう言ってました」

「ふん、そうか。次はそうしよう」

「でも、明日には着いちゃいますよ」

「目的地はソーニアではないだろう?王都までは随分在る」

「王都まではどうするんですか。また馬車を利用するんですか」

「いや、馬車はもうこりごりだ。馬で行く」

「でもねえ、馬もその様子じゃ大変ですよ。慣れてなければ尻だけでなく股もすれますし」

「じゃあ、徒歩だ」

「それじゃ、一体いつ着くかも分からないじゃないですか」


そう言い合いながらも二人は食事を終え、寝袋で横になった。翌朝、陽が昇ると共に馬車が出発する。セオドアの苦痛はまだ止みそうにない。



ソーニアの街に着いた二人は早速、伯爵邸を訪ねた。最初は険もほろろだった門番が、邸から戻って来た時には腰を90°に曲げていた。後ろからこの邸の執事がついて来ている。


「セルア国王太子セオドア殿下、イスタファン様、知らせは御国から届いております。こちらへどうぞ」








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