39. ズデーデン王立学院 ③
部屋から見る景色は絶景だった。
ヨルド川はゆったりと流れ、早春の午後の陽射しを受けてキラキラと川面が輝いていた。遠くにかすかに見える街が対岸の街キリルだろう。
ノックの音がしてキースとレイモンドが入って来た。
「殿下と共にズデーデン王立学院に留学することになりましたレイモンド・シュゼインです。これから宜しくお願いします」
「君のことはレイと呼んでもいいかな。僕のことはアレクで」
「僕は『レイ』でかまいませんが、殿下を呼ぶのは・・・」
「だって学院で僕の名前だすと目立つだろう?」
「わかりました。では、アレク様とお呼びします」
「うん、よろしくね」
「ところで遠目に見えるあの街はキリルかな」
「さようでございます。対岸に着きましたら王都カルアまで3日、ズデーデン王立学院のあるキシュまで4日で到着いたします」
「レイさあ、慣れないのかもしれないけどもうちょっと砕けて話そうよ。同じ学院に入る生徒になるんだし」
「わかりま、えっと、うん、わかった」
「そうそう、その調子」
「あ、そうそうレイ、先に王都に行ってズデーデン国王に挨拶してから学院に向かうから。そのつもりで。あと、僕は馬車には乗らないから。君はどうする?」
「じゃあ、僕もそうする」
「お言葉ですが殿下」とキースが割って入った。
「ズデーデン王国に入ったら移動は馬車のみとなります」
「えー、なんで」
「現地に入りましたら、ズデーデン王国騎士団がお迎えに参ります。警備の必要上、殿下には馬車で移動してもらうことになっております」
「わかったよ。クッション多目に用意してね」
「かしこまりました」
伯爵の館で3日間の休養を取り、ヨルド川を渡るため港に向かった。
港には巨大な外輪船が停泊していた。
俺は正直びっくりした。この世界の文明の進み具合を侮っていたのかもしれない。
「これはどうやって動いているの?」
「驚いたでしょう、殿下。実はこれは魔石をつかって動いているのです」
伯爵が誇らしげに語った。
「これは、我々というよりもズデーデン国の技術なのです。あちらにはドワーフがおりますからな。外洋ではなく短い距離に限られますが、大量輸送が可能になりました」
「すごいね。ズデーデンで学ぶのが楽しみだ」
その後、俺たちは伯爵に滞在中の感謝とお礼を言い、船に乗り込んだ。
船は一行の馬車や馬たちを乗せ出航し、程なくキリルの街に到着した。
キリルの街は対岸のランカスターよりも大きく、港には外輪船のほか外洋にでるような帆船も数多く停泊していた。
船を下りると1個小隊の騎士団が出迎えた。王都まで警護してくれるという。
仕方なく、馬車に乗り王都までの道を揺られることとなった。
1つこれまでと違うことは、大量のクッションが置かれていたことと、レイという話し相手が出来たことだ。