36. 王家の秘密
俺には隠さなければならない秘密がもう1つあった。それは魔法が使えるということだ。
この世界では基本的に人間は魔法を使えないということになっているらしい。その代わり、魔石を利用して魔法のような効果を引き出しているという。
でもそれってある意味、魔法を使っていることになるんじゃないかと思った。
そこで最初に魔石を使い出した人物を調べてみたら驚いた。
この国の初代国王ケン・サクライだった。
あまりにもびっくりしてあやうくお茶をふいて汚してしまうところだった。
まじか。しかも俺と1字違い。こいつぜってー日本からの転生者だと確信した。
文献によると彼自身は卓越した魔法使いだったそうだ。その彼が魔法を使えない人間達のために魔石を利用するという画期的な方法を編み出したらしい。その後、彼は魔石をつかった様々な魔導具を発明しこの国の発展に大いに貢献したとのことだった。そして彼は神となり、神殿の奥深くで眠りについたとある。
彼には子がなかったため、養子のオットーが後を引き継いだ。今の王家はこのオットーの血筋だ。
かつて何回か金銀の髪を持った双子が生まれている。だが全て、金髪が王位につき銀髪はある年齢になると姿を消している。なんだろう。暗殺か。
ともかく俺はその年齢になるまで剣の腕と魔法を上達することにした。
ーーー魔法は秘密裡にね。
時は流れ、俺は14歳となった。
「父上、貴重なお時間を頂きありがとうございます」
「うむ。何かあったのか」
「実は来年、王都の学院への入学のことでご相談に上がりました」
「何か支障があるのか」
「私は北の大国ズデーデンの王立学院に留学することを望みます」
「王太子か」国王は苦い顔をして言った。
ーーーこの頃王太子は俺を完全に敵視しており、会えば必ず嫌味を言われていた。
「ズデーデン王国は多民族国家であり、獣人やドワーフなどもいると聞いています。いろいろ見聞を広めるには絶好の機会と思っております。それに王都の学院に私が進めば、兄上のご負担も増えるのではと推察いたします。無用な争いを避けるためにも是非、私の留学を許可して頂きたく」
「考えておく」
そして俺はズデーデン王立学院への留学が決まった。
もちろん、諸手を挙げて喜んだのはいうまでもない。
これでやっとスペアの重責から解放される。