324.国創り ⑪ セイガ
セイガとシリウスは魔力を吸い取られて弱っている獣人達と人間をベアトリスの元まで運んだ。ベアトリスの方でも医師団と休める場所を準備してくれていた。
「なんてひどい。こんな子供まで」
ベアトリスは弱って身動きがとれない子供達を見て辛そうに言った。
「ベアトリス、僕は彼らの行く末を見守りたい」
「行く末ですか」
「そう。彼らは常人とは異なる魔力量を持っている。このままにしておくのは惜しい人材だ。だが、彼らはその魔力量で囚われたことも事実だ。彼らが望めば魔法を教えたいと思っている」
シリウスは弱っている子供達に目を向けながら言った。
「その為には、彼らの受けた心の傷を治すことが先決だ」
「分かりました。彼らの傷を癒すことに全力で取り組みましょう」
「助かるよ、ベアトリス」
セイガは一通り病人達を見回ったあと、シリウスとベアトリスに告げた。
「これで全員かな。シリウスはこの子達を見てて。僕はもう行くよ」
「もう行くのか」
「うん。何しろ人手が足りないんだ。後、ベアトリス、材木と食料の支援、頼めるかな」
「勿論です。隣国の脅威を取り除いて頂けただけで感謝に堪えません」
「なるべく早くに頼むね。じゃあ、行くよ」
4日ぶりに王宮に姿を現したセイガは真っすぐにエルのいる正教会へと向かった。
「セイガ!お帰りなさい」
「ただいま、エル。アレク、帰ってる?」
「丁度、さっき帰ったばかりよ。食料と農機具を持ち帰ってくれたわ。王城の倉庫にいるはずよ」
「そう。良かったあ。もう僕お腹ぺこぺこ。アレクの料理楽しみに帰ってきたんだ。倉庫だね。行ってくる」
セイガはそういうと一目散に王城へ向かって走り出した。エルは相変わらずのセイガに苦笑している。
王城の倉庫にはアレクとヴァンパイアの文官達がいた。アレクが持ってきた食料と農機具の仕分けをしていたようだ。
「アレク!」
「おう、セイガ、どうした」
「どうしたも何も、僕もうお腹ぺこぺこ。なんか作って」
「お前なあ・・・帰ったら報告することがあるだろうに」
「そんなの後、後。重労働して来たんだよ。労ってよ」
「分かった、分かった。ここはもう任せてもよいか」
近くにいた文官が頷いた。アレクとセイガは王城へと歩みを向ける。
「あれ、ヴァンパイアでしょ?大丈夫なの」
「ああ、エルに忠誠を誓った者だ。血の契約もしている」
「なら、大丈夫だね。何人くらい集まった?」
「30人だ」
「はあ、随分少ないね。前途多難だ」
「そういうな。徐々に増やしていく」
「ところでヴィルヘルム達は?」
「まだ帰ってきていない。聖ピウス皇国の影響であちらも大変らしい」
「そうなんだ。ロンもまだ?」
「まだだ。それよりお前の方はどうなんだ」
「ジル達には言っていた物を届けてくれるよう頼んだよ。あと囚われていた人達を獣人国に運んだ。かなり弱っているようなのでシリウスに任せてきた」
「そうか。ご苦労だったな。お前の好きなカラアゲを作ってやる」
「やったあ!」