316. 国創り ③ セイガ
セイガは獅子国の王都レグルスへの道を軽快に走っていた。
聖ピウス皇国から獅子王国までの街道は人通りが全くない。セイガは本来の姿に戻り、大きく伸びをして走り出した。本来の姿で走るのは久しぶりで、気持ちが良かった。
ーーこれで獅子国の憂いは無くなるだろう
そんなことを思いながら走った。人の足で3日は掛かるだろう距離をセイガは1日で稼いでしまう。夕闇が訪れる頃に、獅子国の検問所に着いていた。
「これは神狼様。王都へ向かわれるのですか」
以前、会ったことのある検問所の兵士がセイガに問うた。
「うん、王都の知り合いにちょっと用があってね」
「そうですか。夕暮れが迫っております。お気を付けておいでください」
兵士はそう言うと、すんなり通してくれた。
セイガはまたも走り出した。彼は夜目が効く。暗闇の中でも道を違わず王都への街道をひたすら走り続けるのであった。
セイガが王都レグルスの北門に辿り着いた時には日が大分高くなっていた。北門を難なく通過し、レグルスの市街地に入ると、以前は浮浪者で一杯だった通りも今では一人も見当たらなくなっていた。
ーー獅子国の復興も順調みたいだな
そんな感想を胸に、物陰で変身し南の商業地区を目指す。暫く行くと、見覚えのある看板が眼に入った。
『ジル&サンガ商会』
店の中に入ると、「いらっしゃいませ~」という甲高い声が響いてきた。
「あのー、ジルさんに会いに来たんですけど」
「えっ、社長に?ふ~ん、僕、何の用で?」
従業員だろう若い女の子がジロジロとセイガを見てくる。
「重要な案件で、社長に直接話したいんだけど」
「社長はどってもお忙しいの。面会の約束か何かしてる?」
「いや、していないけど」
「じゃ、今日は無理だわ」
「そんな困ります。急ぎの用件なので」
「無理って言ったら無理。ちゃんとアポ取ってから来てよね」
セイガが正体を明かそうかと思っていたところに顔見知りの従業員が現れた。
「ケーシー、何やってんだ。この忙しい時にってあれ、もしやセイガ様・・・」
「ああ、良かった。ジルに用事があって、昼夜駆け通しだったんだ。会える?」
「は、はいっ、只今呼んで参ります」と言って慌てて奥に走って行った。側で見ていた従業員の女の子は唖然とした顔をしている。
「セイガ様!」
暫くすると、ジル達が慌てて奥から出てきた。
「やあ、ジルもサンガ、サンギも元気だった?アレクから急ぎの依頼があって来たんだ」
「急ぎのご依頼ですか?まずはともあれどうぞ奥にお入りください」