315. 国創り ②
「ヴィルヘルム、ちょっといいか?」
会議が終わり、各々自分の仕事に戻る中、アレクはヴィルヘルムを呼び止めた。
「話がある。俺の執務室へ行こう」
執務室に入ったアレクは自らお茶を淹れ、空間から焼き菓子を出しヴィルヘルムとウィルに差し出した。
「寛いでくれ。話というのは君の生まれたセルア国についてなんだ」
「セルア国ですか・・」
「確か君は聖ピウス皇国との戦争に負け、母親と共に聖ピウス皇国に連れてこられたと言っていたな」
「はい、そうです。オロイ湖から舟を使って連れて来られました」
「その後のセルア国について何か聞き及んでいるか」
ヴィルヘルムは首を振った。
「とっても綺麗な国だったんです。国中が花で咲き乱れ、皆、幸せそうでした。なのにいきなり聖ピウス皇国が軍隊を送り込んできて。あっという間に蹂躙されてしまいました。そして父上に母上と僕の身柄を渡せと言ってきました。父上は仕方なかったと思います。これ以上蹂躙されて民に苦労を負わせる訳にはいかなかった。で僕らは舟でオロイ湖から聖ピウス皇国へ連れて来られたんです。その後、どうなったか分かりません」
「近隣国の様子が知りたい。サイラス卿と共に行ってくれるか?」
「分かりました。でもどうやって・・」
「サイラス卿達は空を飛んで行くつもりだ。君達は彼らに乗ってセルア国へ行って貰いたい」
「えっ空を飛ぶんですか」
「ここからセルア国へは空を飛んで2日の行程だ。出来るな。セルア国が無事な場合には援助を取り付けて来てくれ」
「援助って・・」
「まずは食料、そして人手だ」
「分かりました。頑張ってみます」
「宜しく頼む。サイラス卿には話を通してあるから中央広場に行ってくれ」
彼らが出て行った後、アレクは念話でロンを呼んだ。
「何?アレク」
「俺はこれから援助を得るためシュトラウス王国に飛ぶ。俺が留守にしている間に俺達の館に行って食料を出来るだけ多く持ってきてくれ。出来るか?」
「任せてよ。あと、クロック達も必要だよね。あの置いてきた馬車に積めるだけ積んで帰ってくるよ」
「流石だな、ロン。では俺は行く」
アレクの周りに魔方陣が浮かび回り出した。ロンは表に出ると竜に変身し、館に向かった。冬が近づいているせいか雨がしきりにロンの翼を叩いた。