304. 転移陣作動
竜騎士達が待機する広場に転移したアレクとエルは、竜騎士達に転移陣の説明をした。
「無事、魔方陣の解除が済んだようですね。では、我々はそこから聖ピウス皇国へ侵入するのですな」この軍の指揮を任されているサイラス卿は言った。
「皆、聞いたか。ヴァンパイアどもは夜目が効くと聞いている。今夜はここで野営をし、夜明け前に出発する。明日は本番だ。今晩は交代で眠り、鋭気を養え」
オオーっと皆叫び、野営の準備に取りかかる。士気が高い。
「アレク様、魔方陣は皇都のどの辺りにでるのでしょう」
「確か、中央広場に出たと聞いている」
「突然、竜騎士が現れたら奴ら驚くでしょうな」
「ここ何年か魔方陣が使えなかったからビックリするでしょうね」
セイガが走ってきてアレクにシリウスの状況を報告した。
「じゃあ、シリウス様は獣人国を出発されたんだな。セイガ、引き続きシリウス様と連絡を取り合ってくれ。それと・・」
アレクはロンの方を見る。その横にウィルとヴィルヘルムがいた。
「彼らも無事着いたようだな」
「はい。僕、初めて空を飛びました。空から見る景色が素晴らしくて感動しました。ね、ウィル」
「ええ、本当に。我々も竜人国のように豊かな国にならなければならないと決意を新たにしました」
「ロンが運んだのか」
「ううん、一番力持ちの竜騎士二人が彼ら用の籠を持って飛んでくれた」
「今から、全員分の夕食を配るから手伝ったくれるか」
「うん、分かった」
それからアレクは空間から用意しておいた食事を次々に取りだし、彼らに手伝わせて全員分の食事を配った。竜騎士達は野営で豪華な食事が出るとは知らされておらず、歓声があがった。
「いやあ、アレク様、野営でこんな素晴らしい料理を頂けるなんて、騎士達も喜んでいます」
「皆さんには、明日、しっかり働いて貰わなければいけませんからね。少しでも英気を養ってもらえればそれに越したことはない。それで、サイラス卿、魔方陣に入る順番だが・・」
翌朝、夜明け前に軍は出発した。五叉路を抜け、広々とした草原を通り森の手前まで進軍した。その頃には日も上がり辺りは明るくなっている。
「全軍止まれ!」サイラス卿の声が響き渡った。
「これより転移陣より聖ピウス皇国の皇都へと入る。先に行った者はそのまま教皇庁に突入しろ。
ヴァンパイアは聖剣でしか斬れぬ。付き従う者は聖剣を持った者達の援護を。では一番隊前へ」
ザっと50名ほどの騎士が前へ出る。
「君達は、私と共に戦陣を切ってもらう。では、参る」
アレクと一番隊の騎士達が魔方陣の上に乗る。すると地面が強い光を出し彼らを飲み込んだ。
「2番隊は僕と一緒に来て」セイガが叫ぶ。彼らは王都から出て獣人国軍と落ち合うことになっている。
彼らが消えるとサイラス卿が「3番隊は私だ」とサイラス卿が言い、4番隊がロン、5番隊にタンガ、最後にエルとウィル、ヴィルヘルムが続く。
最後の隊が消えた後、騒がしかった森にまた静寂が戻った。