301. 侵攻準備
ーーー聖ピウス皇国教皇庁
「大変です、ザビエル様、聖ピウス様が目を覚まされました!」
「それは誠か」
「はい、大至急、聖女の間へお越し下さい」
アレクはきっちり1週間でドワーフの村から戻ってきた。聖剣10本の予定だったが12本になっていた。
「アレク、相当無理したんじゃない」先に戻っていたセイガが尋ねた。
「いやあ、敵の本丸に行くのに少しでも多くの聖剣が必要だと思ってな」
「取敢えず、国王に報告のあとはゆっくり休んだ方がいいよ。アレクは最大戦力の一人なんだからさ」
「そうさせて貰うよ。獣王国の状況はどうだ」
「こっちもベアトリスに協力要請したら快諾してくれた。そうそう、おもしろい奴がいてさ、サイード王子に同伴していた奴が見つかったんだよ。彼が獣王国から聖ピウス皇国への抜け道を知ってて、獣王国側はそこから聖ピウス皇国へと侵攻することになった」
「ならそちらはシリウス様に任せるか」
「シリウスもそのつもりだよ」
「そうか」
アレクは聖剣を国王に献上し、シリウスと獣王国の動きを報告した。
「アレク殿、聖剣の寄贈感謝する。ところで聖ピウス皇国で動きがあったらしい」
「何があったのですか」
「どうも聖ピウスが目を覚ましたらしい。だがまだ動けぬようだ。その代わり、生け贄の数が半端ないらしい。我が国は竜王様の結界があるから良いが、獣王国で闇ギルドが活発化していて、獅子国では大量の行方不明者が出ている。何にせよ、奴が力を取り戻す前に侵攻の準備をしておいて良かった」
「御意。徹底的にやりましょう」
国王との面談を終えたアレクは自分の部屋に帰り、寝台に崩れるように横たわった。12本の聖剣を作るため、不眠不休で作業をしていたのだ。ベッドからは軽い寝息が聞こえている。セイガはそっとアレクの様子を伺うと、隣のエルの部屋へ行った。
「あらセイガ、アレクは?」
「爆睡中。寝ないで聖剣つくっていたみたい。今は休ませてあげよう」
「エル、ピウスの事は聞いてると思うけど」
「ええ。目覚めたみたいね。ヴァンパイアの掟に背いたピウス。いくら足掻こうともヴァンパイアの呪いは消えないわ。いくら外面を魔石で覆おうともね。彼らは忘れている。私達ヴァンパイアはこの世界の者でないことを。再会するのが楽しみだわ」
エルはうっすらと冷たい笑みを浮かべている。それを見つめながらセイガは彼らの末路が見えた気がした。
ーーー聖ピウス皇国教皇庁
「聖ピウス様がお目覚めになった」
喜びで胸が一杯になった教皇ザビエルが聖ピウスのところへ行こうとした時、周りの神官に止められた。
「教皇様、危険です。聖ピウス様は正気ではなく、やみくもに魔力のある者を捕まえ、魔力を吸い上げています。吸い上げられた者は灰となって散りました。今、魔力のある者を与え抑えております。しかしそれも時間の問題。教皇様、このあとどのようにすれば良いかご指示下さい」