300. 作戦会議 ③
「先程は真祖について簡単にご説明致しましたが、実はヴァンパイアとはこの世界には存在しない者でした」
「と言いますと」
「実は私の父、シン・サクライはこの世界の者ではありません。異世界からこの世界に来て、私の母、ユイと出会い、私が生まれました。およそ500年前の出来事です。シンはヴァンパイアの真祖として多数のヴァンパイアの部下を持ちユークリッド王国建国に役立てました。シン・サクライは真祖の掟として、二人以上同じ世界に留まることが出来ず、私が生まれた後、部下に私を託し黄金郷へ旅立ちました。そして残った私の守り役がピウスだったのです」
「成程、その守り役が裏切ったということですな」
「はい。ですが私が目覚めた以上、彼らは安閑とはしていられなくなり、魔族の甘言に乗せられ魔石と魔力を集めるため非道なことを行っています」
「ふむ、ヴァンパイアについては他に質問はあるか」
「ヴァンパイアに有効なものは聖剣のみとのことですが、その聖剣はどのくらいあるのでしょうか」
「それについては私がお答えする」アレクが立って周りを見渡した。
「すぐに用意できるのは、この国にある2本、獣人国から3本、シュトラウス王国から3本です。あと1週間程待って貰えれば、新たに10本ご用意することが可能です」
「18本か。あとはヴァンパイアがどれだけいるかだが」
「ちょっと宜しいでしょうか」
一斉に重臣達の目がウィルに注がれる。
「私は、エル様に助けられてよりウィルと名乗っておりますが、かつては聖ピウス皇国でマルタ司教と呼ばれた幹部の一人でした」
「ではそなたはヴァンパイアなのか・・」
「はい。しかしエル様のお力で従属の頸木から逃れることが出来た者です。ヴァンパイアの数ですが、私の記憶に寄りますと、幹部は教皇、枢機卿3名、司教12名となっております。その下に闇ギルドや兵などを加えましても多くて300名程かと思われます。その他の者はヴァンパイアもどきと言ったもので身体が身軽だとか再生能力があるが欠損などは補えない者など普通の剣で太刀打ちできます」
「そうであるならば十分に太刀打ちできるか。アレク殿、聖剣は1週間待てば良いのだな」
「はい。ここへ来る途中でドワーフの村に立ち寄りお願いしてきました」
「ならば、出発は十日後ということにする。各自、おのおの準備を始めよ。アレク殿、ドワーフと獣王国にいる賢者様とシリウス様に連絡を頼む」
「御意」
その後も会議は続き、夜になった。アレクは再びドワーフの村へ飛び、エルは獣王国へ向かった。
「ロンは行かなくてもいいの」王妃フランシスが聞くと、
「うん、暫くぶりの竜人国だから家族水いらずでいろってアレクが」
「まあ、気を遣って下さったのね。ロンも大分大人になったのね。見違えたわ」
「へへへ、僕もう結界も張れるし、ブレスも吐けるんだ」
「すごいわね。でも嬉しいわ。貴方がとても良くしてもっらっていることが分かって」
「うん、皆、すごくやさしいよ。平和になったらお母様にも僕らの館に遊びに来て欲しい。すっごく良いところなんだ。美味しい料理もあるし、温泉だってある」
「そうなのね。ぜひ、招待してね」
とうとう300回です。おかげさまで累計10,000PVも越えました。ここのところ暑さが酷くて体調が悪く、飛び飛びになってしまい申し訳ありません。さて、これから聖ピウス皇国の滅亡まで一気にいきます。これからも宜しくお願いたします。