298. 作戦会議 ①
翌日、アレクはシュトラウス王国へと向かい、シリウスとセイガは獣王国ベアトリス女王の元に飛んだ。残ったエルが部屋でロンとまったりしていると国王から呼び出しが掛かった。
「エル様、ロン殿下、国王陛下がお呼びです」
「何かしら。ロン、心当りある?」
ロンは首を振る。取敢えず侍従について行ってみることにした。
「エル殿、寛いでいるところすまない」
大きな扉を開けると国王が立ってエルを迎える。見ると、この国の重臣らしき人々が並んで座っている。会議をしていたようだ。
「皆に改めて紹介しよう。故ユークリッド王国の聖女であるエル殿だ。横にいるロンは私の次男であり、エル殿と契約を結んでいる。よしなに頼む」
エルがお辞儀をすると、全員立ち上がって胸に手を当てた。
「エル殿どうぞかけてくれ。ここに呼んだのは他でもない、聖ピウス皇国とヴァンパイアについて詳しく話を聞こうと思ったのだ。以前、私に話してくれたようにここにいる者達に説明してくれないか」
「分かりました」と言って、エルは自分が育った経緯について話し出した。ユークリッド王国で暗殺されそうになった時に助け出され、結界の向こう側、シュトラウス王国で育ったこと。義両親が病で死んだときに託されたペンダントにによって自分がユークリッド王国の関係者だったことが分かった事。その後、アレクに会い、魔の森でロンとセイガに出合ったこと。その後、黄金の道を使いこちら側に来てロンの希望により竜人国へ来た事。さらに、国王からユークリッド王国は滅亡し、いまは聖ピウス皇国となっていて、闇ギルドによってこの国がアヘンによって侵されている事実を知り、この国にある聖ピウス教会がその元凶であることからアレク達と共に戦ったことを話した。そして戦いの中で、自分がヴァンパイアの真祖であり聖女であることをペンダントによって自覚したことを話した。
「私はヴァンパイアの真祖です。500年眠りから覚めなかったため、ピウス始めヴァンパイア達は人間を侮り、隷属していると聞きます。私が露ほどもそんなこと希望していないのにです。更に、彼らは私を恐れ、目覚めないうちに暗殺しようとさえしました。私は両親が慈しんだユークリッド王国を蹂躙した彼らを許せません。彼らは私を非常に恐れています。何故なら、私が望めば彼らは灰になってしまうからです。なので魔人族と組み、魔石を使って灰になることを阻止しようとしています。そのためには膨大な魔力を魔石に吸わせなければなりません。そこでアヘンを使って、竜人族や獣人族の魔力のある者を拉致し魔力を吸う暴挙にでています。ヴァンパイア族は夜目が効き、俊敏に動きます。また上位の者はコウモリに変身する事もできます。また体を損傷しても復活できる厄介な相手でもあります」
エルは一旦、言葉を切って手近に置いてあるお茶を飲んだ。周りは水を打ったような静けさだった。