293. 魔の森からの襲撃
アレク達は冒険者達の後ろを辺りに気を配りながら付いていった。昼食を終え、日が傾き始めた頃、魔の森の中で奇妙な動きがあった。最後尾にいた冒険者グループが襲われたのだ。といっても、相手は姿を見せず冒険者達が無言でばたばたと倒れていった。ロンに結界を張らせ、近づいてみると彼らは既に死んでいる。
「くっ」結界に複数の針が刺さった。アレク達は馬を降りて辺りを警戒する。すると森の中から数人の人間族の男達が現れた。だが、どうも様子が変だ。
「アレク、こいつら死臭がする」
セイガが鼻に皺を寄せながら唸った。出てきた者達は皆、青黒い顔色をしている。
「闇ギルドはまだ死者を冒涜しているのか。ロン、構わん、焼き払え」
ロンが前に出て、ブレスで辺りを焼き払った。男達は無言で倒れ炭と化す。その遺体から魔石が出てきた。その魔石を集め、再度高温のブレスで溶かす。
「先を急ごう。前にいた連中が心配だ」
クロックに跨がり、先を急がせた。日が大分傾き、そろそろ日没
になろうとしている。
野営場に入ってすぐ、日没を迎えた。するとどうだろう、今まで進んできた広い街道が跡形もなくなり鬱蒼とした森となった。
「やあ、間に合ってよかったな」近くにいた冒険者が声をかけた。
「もう少し遅かったら、魔の森に飲み込まれていたぜ」
「後ろの連中が、闇ギルドの奴らに襲われていたんだ。他にも襲われたかも知れない」
「えっ、そうなのか。俺らはここに来るまでいたって平和だったよ。先に進んでいった奴らは分からないけどここにいる連中はそんな事は起こらなかったぜ。俺らはここで野営だ」
「そうか。ならいいんだ。俺達は先に行くよ」そう言ってアレク達は馬を進めた。
暫く森の中の小道を進んでアレクは足を止める。
「今日一日を乗り切ったな。願わくば妙な連中がアインステッドに入り込んでいなければいいんだが」
「大丈夫でしょう。私達も十分気を配って黄金の道を進んで来たし」
「そうだな、じゃあ、俺達も館に帰りますか」
アレク達の周りに巨大な魔方陣が現れる。次の瞬間、彼らの姿はそこになかった。
「くそっ、魔石の反応が消えた。やはり人間族はだめだ」
「バルトロイ枢機卿、いかがされましたか」
「ああ、魔力のある人間族の奴に魔石を埋め込み訓練したのだが、だめだったようだ」
「私達ヴァンパイア族ではだめなのでしょうか」
「ピウス様でも分かるとおり、ヴァンパイア族と魔石はどうも相性が悪いのだ。魔石をいれると目覚めなくなるというか、魔石に注入する魔力が半端なくいるのだ。やはり早急に獣人族への侵攻を進めなくては」